あるキリギリスの決心

昔々、あるところに働きもののアリと怠け者のキリギリスがいました。

アリは厳しい冬に備えるために夏の間せっせと働き、食料を蓄えていました。
その間、キリギリスはバイオリンをひき、遊んでいただけでした。

そして冬が訪れました。
夏の間真面目に働いていたアリは、貧しくとも飢えることのない生活を送っていました。

一方、食べるものが無くなったキリギリスは今まさに飢え死にしようとしていました。

そこへ、そんなキリギリスのことを哀れに思った一匹のアリが手を差し伸べました。

キリギリスはそのアリから食料を分けてもらい、冬を乗り越えました。

そして再び夏が訪れました。

あんなことがあったにもかかわらずキリギリスは真面目に働こうとしませんでした。

ですが、一つ変わったことがありました。

嘘や言い訳が上手くなっていたのです。
言葉巧みに働き者をだまし、食料を頂戴していました。

そんな生活を続けていたある日――

キリギリスはある小さな嘘を見抜かれました。

そしてキリギリスは愛想をつかされ、以前救いの手を差し伸べてくれたアリも話に応じてくれなくなりました。

これにはさすがのキリギリスも堪えました。
だからキリギリスは考えました。

次はバレないようにもっと上手くやろう――

……

違う違う、そうじゃない。

いつから俺はこんな風に考えるようになった?

昔の――ガキだった頃の俺はこんなんじゃなかったはずだ。

小さかった頃は嘘のつき方も知らなかった。
間違ったら謝るか、泣くしかできなかった。

いつからだろう、こんな風に嘘をついたり、ごまかしたり、言い訳するのが上手くなったのは。

もうやめよう。くそったれだ。
自分を変えるんだ。少しずつ。
正しいものだけを積み重ねて、嘘偽りない強い人生を歩むんだ。

……

キリギリスは手に持っていたバイオリンを地面に叩きつけました。

(さよならだ。これまでのくそったれな自分と)

キリギリスはアリの巣へ背を向け、新天地へ向けて足を前に出しました。

おしまい

――

これはイソップ寓話「アリとキリギリス」の改変です
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