九十九神6

長く使われた物には命が宿る、という話を聞いた事はあるだろうか。
そのようなものを九十九神と呼ぶらしい。

もし、それが本当だとして――
意思を持った彼らはどのようなことを考えるのだろうか?

それでは、これから彼らの生活を覗いてみよう。
 
   ◆◆◆

スイス鉄道時計

私は時計だ。何の変哲も無い普通の時計。

いや、ただ一つ、普通では無いところがある。
それは廃墟の壁にかけられているっていうことだ。

ここは学校だった場所。
廃校が決まり、私も時を刻むことは無くなった。
今ではぼろぼろで、ほこりだらけで、そして乱雑なただの廃墟だ。

だが、こんな場所にもなぜかたまに人が訪れる。

彼らは多様である。
何がおもしろいのか、ひたすらきゃーきゃー騒ぐ者、ただひたすら怖がる者、あちこち写真を撮って回る者など、とにかく様々だ。
この廃れた雰囲気が彼らの何かをくすぐるのだろう。

そんなある日、私は彼らに悪戯を仕掛けてみた。
それは本当にただの気まぐれでやったことだ。
どんな反応をするのか、ちょっと見てみたかったのだ。

何をやったかって?
カチリと、わざと大きな音を立てて秒針を動かしたのだ。

え? その時の人間たちの反応はどうだったかって?
想像にお任せするよ。

それ以来だ。お客さんが増えたのは。
私がやった悪戯を誰かが外で話したのだろう。
怖いもの見たさに、多くの人間がここを訪れるようになった。

私は彼らの期待に応えたよ。
毎回というわけじゃ無かったがね。
そしていつからか、この場所は心霊スポットと呼ばれるようになった。

そこからはあっというまだった。
噂が噂を生み、その過程で尾ひれがつき、ありもしない心霊現象や過去話が追加されていった。
今では私がいる教室では過去に自殺者が出たことになっている。
そんなもの、開校当時からいる私は見たこと無いがね。

TV局の人間が霊能力者を連れてここに来たこともあった。
その時が一番面白かったかな。
どう面白かったかって? 想像にお任せするよ。

今では、ここを訪れる人間を驚かすのは私の趣味のようなものになっている。
このような形でこの場所が賑やかになるのは本意では無かったが――
こんな余生もありなのかもしれない。
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