シヴァリー 第三十二話

   ◆◆◆

  武人の性

   ◆◆◆

 ラルフがカルロを倒してから二週間後、その情報を偵察兵から聞いたサイラスは、顎に手を当てながらじっと考え込んでいた。
 その視線の先には偉大なる大魔道士の聖地がある。
 つい先ほど、リックと思われる部隊がそこへ駆けていった。
 故郷がヨハンに襲撃されているのを耳にして急いで戻って来たのだろう。

(リックがヨハンを倒してくれるのであればそれで良し。駄目ならば……)

 サイラスはもしもの時の事を、自身で手を下さねばならなくなった場合の事を想像した。
 どうやってやるべきか、様々な状況を思い浮かべながら、それぞれに対して最適な選択肢を頭の中に用意する。
 考えながら、サイラスの手は自然と動いていた。
 空気をこねるかのように、手を滑らかに、そして何度も開閉させる。
 サイラスの想像は佳境の場面を迎えていた。
 サイラスの脳裏には命乞いをするヨハンの姿が描かれていた。
 さて、これをどうするか? どうしたいのか?
 サイラスの手が強張る。
 瞬間、

「っつ!」

 手の平に走った熱く鋭い痛みに、サイラスは目を細めた。
 見ると、手の平には小さな火傷が出来ている。
 興奮のあまり電撃魔法を暴発させてしまったようだ。
 サイラスは傍目にはわからないほどにゆっくりと深呼吸をしながら手を握り、火傷の跡を隠した。
 爪が火傷に食い込む。
 疼くような痛みが生まれ、手から腕に伝わる。
 その鈍い痛みが、サイラスにはなぜかとても甘美なものに感じられた。

   ◆◆◆

 同時刻、偉大なる聖地のほぼ真南に位置する町の宿屋に、一人の女が泊まっていた。
 借りた部屋の窓際に腰を下ろし、外を眺めている。

シャロンイメージ

 その雰囲気は妖美。
 しかしその眼差しはどこか暗く、重く、そして鋭い。
 どうやら、女は何も見ていないようであった。
 往来に人が通っても、瞳が全く動いていないからだ。
 まるでどこか遠くを見ているかのようであった。
 しばらくして、部屋の中にノックの音が響いた。
 女が「どうぞ」と答える。
 眼差しの重さとは違い、その声は透き通っていた。

「失礼します」

 女の美しい声に合わせるかのように、はっきりとした声を出しながら一人の男が入室する。
 男は女の前で跪き、口を開いた。

「ラルフがカルロを倒しました」

 女が視線を外から男に向けながら口を開く。

「死んだの?」

 男は首を振った。

「いえ、片足を失っただけのようです」

 答えながら、男は怯えていた。
 男は女の視線を恐れていた。
 瞳から感情が全く読めない。まるで人形のようであるが、無垢とは違う。その眼は確かに相手の心を覗いており、そして何か得体の知れない感情を奥深くに湛えている。
 まさに恐ろしいの一言。心を一方的に読まれているような感じがする。
 男は頭を深く垂れながら、女の言葉を待った。
 しばらくして――

「そう」

 と、女はやけにあっさりとした返事を返した後、視線を窓の外に戻した。
 終わったのだろうか、そんな事を考えながら男が胸をなでおろすと、女は外を見ながら再び口を開いた。

「彼は……サイラスはどうしてる?」

 男は身を強張らせながら答えた。

「偉大なる者の聖地の前から動いていないようです」

 予想通りだったらしく、女は表情をまったく変えずに口を開いた。

「そう。やっぱりここで仕掛ける気のようね。ラルフがカルロを倒したことは彼の耳にも入ったでしょうし」

 女は一呼吸分の間を置いてから、男を横目で一瞥し、口を開いた。

「下がっていいわ。監視に戻ってちょうだい」

 待ちかねていた開放の宣言に男は一礼を返した後、部屋から出て行った。

「……」

 男がいなくなった後、女は髪をいじり始めた。
 その様は遊んでいるようにも、考え事をしているようにも見えた。
 しばらくして女の手が止まった。
 どうやら枝毛を見つけたようだ。
 直後――パチリ、という音が髪を持つ女の指から鳴った。
 はらりと、切断された枝毛が床の上に落ちる。
 切られた箇所が丸みを帯びていることから、焼き切れているようであった。

 一瞬であったが、それは見えた。
 音が鳴った瞬間、小さいが確かに、そして間違いなく、女の指から紫電が生まれていたことを。
 
   ◆◆◆

 その夜――

 リックの母クレアは暗い私室の中で覚悟を固めつつあった。
 食料が尽きかけている。こうなってはやるしかない。
 しかし勝ち目は万に一つも無い。こちらの兵は百に満たないのに対し、相手は約四千だ。

「……」

 目を閉じ、思考を巡らせる。
 自身が出来ることを整理しながら、万に一つの勝ち筋を模索する。
 しかしいくら考えても光明は見出せない。
 焦燥感が雑念を育む。
 自身にカルロのような力があれば――炎のような、多勢を相手に出来る力があればこのように悩む必要など無いというのに。
 そんな言葉が心に生まれた直後、クレアは一旦思考を切った。
 心を静かにし、雑念が消えるのを待つ。
 無いものは無いのだ。考えても仕方が無い。
 しばらくして、心が元の明瞭さを取り戻したことを感じたクレアは、思考を再開した。

「……」

 意識を内側に向ける。
 深く、出来るだけ深く意識を集中させる。
 その時、ふと、一匹の虫の鳴き声がクレアの耳に飛び込んだ。
 が、クレアの意識は揺るがなかった。
 虫の音は確かにクレアの鼓膜を揺らしたが、心にまでは届かなかったのだ。

 瞑想のようなこの行為は夜が明けるまで続けられた。


   ◆◆◆

 翌朝。

 まだ日の光が弱い早朝に、クレアはリックの妻ブレンダを自室に呼んだ。

「何か御用でしょうか、義母上様」
「……」

 ブレンダの問いにクレアはすぐには答えなかった。
 しばらくして、クレアは長椅子から腰を上げ、窓の傍に歩み寄った。
 外には相変わらずヨハンの軍がひしめいている。

「……」

 悩ましく、そして憎らしい顔でクレアはその様子を眺めた。

(……相変わらずきっちりとした隊形を組んでこちらを包囲している。輪も小さく、密度がある。どこか一点でも突破出来れば、と思っていたけど……私一人ならともかく、エリスを守りながらでは無理そうね)

 ブレンダは何も言わず、黙ってクレアの言葉を待った。
 そして静寂が耳に痛くなった頃、クレアはようやく口を開いた。

「……今日、ヨハンに戦いを挑みます」

 クレアは外を見ながらそう言った後、ブレンダの方に振り返りながら言葉を続けた。

「ですが、勝ち目が無いことは誰の目にも明らか。ですので、あなたとエリスは外に出ず、この屋敷の中に隠れていなさい。ヨハンの目的はエリスを手元に置く事。抵抗しなければ乱暴はしないでしょう」

 クレアは再び窓の方に顔を向けながら最後に、

「話はそれだけです」

 と添えて、話を終わらせた。
 が、ブレンダは部屋から出て行こうとしなかった。
 しばらくして、ブレンダは口を開いた。

「義母上様、わたくしも「駄目です」

 クレアは背に投げつけられたブレンダの覚悟を、否定の言葉で即座に遮った。
 しかし、ブレンダは食い下がった。

「私も武人の妻。覚悟はとうに出来ております」

 これにクレアは首を振りながら「何と言おうと、駄目です」と再び拒絶した後、ブレンダの方に向き直りながら言葉を付け足した。

「エリスは幼い。あの子にはまだあなたが必要です」

 こう言われては、ブレンダには何も返す言葉が無かった。
 そして、黙るブレンダにクレアは念を押した。

「決してここから出てはいけませんよ? いいですね?」

 これにブレンダは暫し沈黙を返した後、

「……わかりました。義母上様の御心のままに」

 と、丁寧な言葉でクレアの言いつけに従う意思を示した。

   ◆◆◆

 正午――

 兵士からの緊急の合図を聞いたヨハンは昼食をそこそこに、陣の外に出た。
 耳にしたのは合図だけで内容は知らない。
 尋ねるまでも無かったからだ。

「やっと出てきたか。待ちくたびれたぞ」

 ヨハンの視線の先、屋敷の門前には少数の手勢を連れたクレアの姿があった。
 これに、ヨハンの側近であるカイルが口を開く。

「降伏するつもりでしょうか?」

 普通はそうだ。しかしカイルの言葉が疑問形になったのは、クレアが手勢を連れているからだ。
 その数は百に満たないほど。
 たったそれだけの数ではどうにもならないのは明らかだ。が、カイルにはそれが抵抗の意思表示であるように見えた。
 そして、ヨハンはカイルの問いに対し、

「いや、あれは戦う気だ」

 と、断言した。
 どうしてそんなにはっきりと言えるのか、という疑問の眼差しをカイルは向けたが、ヨハンはそれに答えず、

「戦闘になるぞ。準備しておけ」

 と、淡白な命令だけを出した。

 ヨハンは知っていたのだ。覚悟した人間がどういう目をするのかを。
 クレアの目は、かつて英雄として名を馳せていた頃の自分に、単身で挑んできた若き頃のカルロの目にそっくりだったのだ。

   ◆◆◆

 クレアは遠くに見える高台に鎮座するヨハンを目指して歩いた。
 すると、正面に立ち塞がる部隊の列の中から、数人の兵士達が前に歩み出てきた。
 それは見知らぬ顔で、ヨハンの代理であると見えた。

(ヨハン自身は話し合いに来ないか。やはり警戒されているようね。それはつまり、相手も戦いの心構えが出来ている、ということ)

 その代理の男は手の平をクレアに向けてかざしながら口を開いた。

「そこで止まれ!」

 声を張ってようやく相手の耳に届く距離。
 クレアが言われたとおりその場で足を止めると、代理の男は手を下ろしながら再び声を上げた。

「用件を聞こう!」
「……」

 クレアはわざと答えなかった。戦いになるのは互いに分かっているはずだ。こんな茶番は早く終わらせたい、そう思っていた。
 代理が続けて声を上げる。

「降伏するならばその場に跪け!」

 その言葉を待っていたクレアは、代理にその真意を尋ねた。

「降伏して、その後どうなります?」

 クレアが何を聞きたがっているのかが分からなかったのか、代理は少し言葉を詰まらせた。

「……あなた方の身柄は我々の管理下に置かれることになる!」

 クレアは間を置かずに問い詰めた。

「もっと具体的に言ってくださる?」
「……」

 我々の管理下に置かれる、それがどういう状態で、どのような生活なのかを理解していた代理は口を閉ざすことしか出来なかった。
 そして、代理が口に出せなかった内容をクレアが答えた。

「何も言えず、何も出来ず、自由が無い中で良いように利用される、ということでしょう?」

 正解であった。が、そうは言えない代理は言葉を濁した。

「どう思おうと勝手だが……ならばどうされる?」

 しかし濁し方が下手であった。これでは認めているようなものであり、クレアはそう受け取った。

「……つまり、身も心も捧げろと?」

 望まぬ方向に話が傾いているのを察した代理は声を荒げた。

「どう思おうと勝手だと答えただろう!」
「……」

 代理が放った威圧に対し、クレアは沈黙を返した。
 しばらくして、クレアは「すっ」と、膝を折った。
 瞬間、代理の顔が緩んだ。
 跪こうとしている、そう見えたからだ。
 が、クレアの片膝が地に着くことは無かった。
 背を前に傾け、中腰の姿勢で固まっている。
 助走をつけるための前傾姿勢のようだ、代理がそんなことを思った瞬間、

「なめるなっ! 下衆がぁっ!」

 と、叫び声を上げながら、クレアは前に駆け出した。
 始まりだ。始まってしまった。
 足裏を発光させ、代理との距離を一気に詰める。
 代理が防御魔法を展開する。
 それを見たクレアは右手を脇の下に引いた。
 その型は指を伸ばして揃えた貫手。
 回りこむ、という選択肢はこの時のクレアには無かった。
 ここは正面突破すべき。それも出来るだけ派手に。
 そんなことを考えながら、クレアは指に魔力を込めた。
 指先が発光を始める。
 クレアは眩く鋭利なそれを、正面にある防御魔法に向かって突き出した。
 輝く指先は防御魔法にあっさりと突き刺さり、そこに穴を生んだ。
 真円では無いその穴は防御魔法に綻びを作り、そして亀裂となった。
 その亀裂を起点に防御魔法は裂けた。穴が大きく、そして一気に広がるように。
 光魔法が弾け消える際の特有の音を発しながら、防御魔法が霧散する。
 瞬間、クレアは突き出している手の型を貫手から掌打に変えた。
 代理の胸にクレアの手の平が叩きつけられる。
 直後、代理の体は真後ろに大きく吹き飛んだ。
 背中から落ちた代理の体は地の上を一度跳ね、土煙を上げながら数歩分ほど滑った。
 数瞬、場を静寂が支配した後、

「ごほっ」

 という声を上げながら、代理はその口から盛大に血を吐き出した。
 その様を見ながら、クレアはゆっくりと拳を引いた。
 見せ付けるように構えを整える。
 貫手のままでも倒せた。なのにわざわざ掌底打ちに切り替えたのには理由がある。
 刺し殺すよりも、吹き飛ばしたほうがより注目を集められると思ったからだ。
 そして、事態はクレアが望むほうに運ばれていた。
 クレアは自身に視線が集中するのをはっきりと感じた。
 その視線が光弾に変わるまで時間はさほどかからなかった。

「撃て!」

 誰かの声を皮切りに、光弾が一斉に放たれる。
 それらは引き寄せられるようにクレアの元に集まった。
 全ての光弾がほぼ同時に着弾し、場が轟音と閃光に包まれる。
 舞い上がった土煙のせいで結果がどうなったかは見えない。
 ヨハンの兵士達はその茶色い幕に目を凝らした。
 静寂が耳に痛い。
 兵士達は期待し、そして待っていた。「やったぞ!」という勝利の声を。
 しかし、次に兵士達の耳に入ったのは、

「うがぁ!」

 という悲鳴であった。
 声がした方へ視線を移すと、そこにはクレアと倒れた数人の兵士の姿があった。
 これに思わず誰かが、

「ひるむな! 反撃しろ!」

 と、声を上げたと同時に、クレアに対し再び集中攻撃が放たれた。
 それらをクレアは避け、時に受け流した。
 クレアの周囲を飛び交う大量の光弾。その苛烈な攻撃の中で、クレアは事の順調さを確信していた。
 これでいい。自分に攻撃が集中すれば味方の被害が減る。
 周囲の魔力を少し探れば見ずとも分かる。今のところ、自分の仲間は誰一人倒れてはいない。
 敵はまだ気が付いていないようだ。しばらくは有利に進めるだろう。
 クレアはそう思っていた。
 が、一人だけ状況を理解している者がいた。
 それはヨハンであった。
 この流れを見ていたヨハンは思わず舌打ちをした。

(愚か者どもめが。あの程度のことにまんまと意識を奪われおって!)

 ヨハンは苛立ちを顔に表しながら声を上げた。

「クレアにこだわるな! まずは取り巻きの雑魚共から片付けよ!」

 その至極真っ当な指示に兵士達は「はっ」とした表情を浮かべた後、すぐさま従った。
 クレアへの攻撃を足止めのための牽制程度にとどめ、追従する手勢達に攻撃を浴びせる。
 これにクレアは焦った。
 マズい。これでは味方が全滅するのは時間の問題だ。
 味方は壁としてでは無く火力源としてこの死地に連れて来た。自分一人でこの人数を倒しながら進むのは難しい。
 しかしこうなってしまっては壊滅は時間の問題だ。それまでに少しでもヨハンに近付きたい。
 だが正面突破は避けたい。雑魚は問題にならないが、側近らしき五人、その中でもヨハンの傍にいるあの赤毛の男はかなり危険だ。
 この距離からでも分かる。あの赤毛の男の魔力がヨハン以上であることが。
 それだけでは無い。何か、自分と同じ匂いのようなものを、「武」の気配を感じる。
 あれを避け、雑魚との混戦に持ち込みつつ、なんとかヨハンに食らいつきたい。
 どこか突破口は――クレアは目と魔力感知の両方をもってそれを探った。
 しばらくして、それはようやく見つかった。

(左側に比べて右側からの攻撃が緩い。右側だけ敵の隊列が少し崩れている)

 そこを攻めてヨハンへの足掛かりに――そう思ったクレアは後ろにいる仲間達に対して「援護を!」と声を上げようとした。
 しかし出来なかった。
 振り向くまでも無かった。
 魔力を感知出来るからわかるのだ。たった今、最後の仲間が倒れたことを。
 視線が再びクレアに集まる。
 こうなっては、やる事はただ一つ。
 見せ付けるのだ。我が一族の「意地」と「誇り」、そして「技」を。
 そして、集中攻撃が再び始まったと同時にクレアは鋭く地を蹴った。
 その姿が陽炎のように揺らぎ、伸びる。
 クレアはここにきてようやく奥義を使った。
 もういくら速く動いてもいい。味方が付いて来れるかどうかを心配する必要は無くなったのだから。
 そして同時に時間との勝負でもある。自分の弱い体がこの負荷にいつまで耐えられるのか。
 右側の敵隊列の中に踏み込むながら三閃。
 型は全て貫手。
 光の線が走った刹那、一呼吸もしないうちに線上にいた兵士が血を噴出しながら崩れ落ちる。
 間を置かずに次の目標に突進。
 最速かつ最短の攻撃で突き伏せる。
 敵の反撃は出来る限り小さな動きで回避。
 同時に同士討ちを狙う。

「ぐあっ!?」

 避けた光弾の一つが射線上にいた兵士に炸裂。
 これを見た別の兵士が声を上げる。

「弾を正面に飛ばすな! 足を狙え!」

 自分の足に視線が集まるのを感じたクレアは上に跳んだ。
 立っていた場所に数多くの光弾が着弾する。
 背に閃光と爆風を感じながら、クレアはふわりと地に降り立った。
 間を置かずに再び跳躍。
 直後、先と同じ轟音が真後ろで鳴り響いた。
 これでいい。足だけを狙って来るならば着地だけに気を付ければいい。土煙が舞い上がることもありがたい。これがあれば身を隠せる。
 クレアはひらりひらりと宙を舞いながら、

「?! 見えないぞ! どこに隠れた!?」

 土煙の中に姿を隠し、

「土煙のせいで何も見えん! 一度攻撃をやめ……っがふぁ?!」

 手頃そうな敵に奇襲を仕掛けた。
 煙から煙へ、人の影から影へ、身を隠しながら転々と移動し、次々と突き伏せる。
 そして、手近な者を一通り倒した頃、土煙が晴れた。
 視界が広がる。
 瞬間、凄惨な光景が兵士達の目に映った。
 数多くの死体と血に染まった地面、それがクレアを中心に広がっていた。
 体に走った戦慄をねじ伏せるかのように、兵士の一人が声を上げる。

「前列突撃!」

 指示を受けた前列の大盾兵達であったが、すぐには従えなかった。恐怖が彼らの足を地面に縫い付けていた。
 が、勇気ある一人が走り出したのを合図に、大盾兵達は突撃を開始した。
 対するクレアは動かず、少し考えた。
 大盾兵の突撃か。身動きを取れなくするのが狙いだろう。これを正面から突き破るのは骨が折れる。
 だからクレアは相手にしないことにした。
 大盾兵の列が目前に迫ったと同時に地を蹴る。
 ふわりと浮き上がるクレアの体。
 上昇しながら、クレアは胸部を支点にして体を前に回転させた。
 空中で逆さになったクレアの頭の下を大盾兵が駆け抜けていく。
 下に垂れたクレアの髪が大盾兵の顔に触れるほどの小さい跳躍。
 しかし滑らかで鋭い。回転が速い。
 飛び越えられたと気付いた大盾兵が振り返る頃には、クレアは既に地を蹴り、前へ駆けていた。
 突進するクレアに迎撃の光弾が浴びせられる。
 それは足元のみを狙った攻撃では無かった。
 もう同士討ちが起きても構わないと考えているのだろう。
 クレアは膝に向かって飛んでくる一つの光弾に目を付けた。
 ぎりぎりまで引き付ける。
 そして、クレアは素早く膝を振り上げ、その光弾を踏みつけた。

「!」

 兵士達の顔に驚きが浮かぶ。
 光弾を踏み台にして、クレアは跳び上がった。
 続けて、顔面を狙って飛んで来ていたやや高めの光弾を踏みつける。
 クレアの体がさらに上へと舞い上がる。

「光弾を足場にして飛んだ?!」

 頭上を通過するクレアを見上げながら、兵士の一人が声を上げる。
 これに反応した数名がクレアに対して光弾を放った。
 数は五。
 ほぼ同時に飛んで来た最初の二つに対し、クレアは身を反らして一つを避けつつ、もう一つを右手で叩き払った。
 その反動を利用して空中で横回転。次に迫る三発目と四発目を光る回し蹴りでなぎ払う。
 反動を再び利用して縦回転へ。最後の一発に対してかかと落としの要領で足を振り下ろす。
 最後の光弾を踏み台にして上へ高く跳躍。
 上空から全体を眺めてヨハンを探す。
 隊列が変わってきている。ヨハンを守るために全体が動いているのだろう。
 厚みを増してきている箇所の中央に、目と魔力感知の能力を向ける。
 見つけた。目が合った。
 まだ少し距離がある。しかしこの跳躍でかなり近づけた。
 直後、クレアの体から浮遊感が消えた。
 その体が自然落下を始める。
 クレアは手を広げるなどの減速姿勢を取らなかった。むしろ、速く降りるために体を真っ直ぐに伸ばした。
 風切り音が聞こえてきそうな姿勢と速度。
 そして、その身が地に達する直前、クレアは右足を振り上げた。
 左足が地に触れるより刹那早く、輝く右足を地面に叩きつける。
 その際、クレアは右足から防御魔法を展開した。
 足裏から広がった光の膜が衝撃に破れ、破片が四方に散る。
 足裏から伝わるその衝撃に逆らわず、流れるように右膝を曲げながら地面の上を転がって受身。
 そのまま衝撃によって舞い上がった土煙の中に身を隠す。
 同時に奥義を用いて進路を急変更。転がった方向に対して直角となる向きに進路を変えつつ、土煙の中から飛び出す。
 その鮮やか、かつ鋭い動きに正面にいる兵士が表情を変える。
 その顔が驚きの表情を完成させる前に貫手を一閃。
 続けて二閃、三閃。
 陽炎のように高速移動しながら、敵を次々と突き伏せる。
 順調だ。体力も温存出来ている。
 出来るだけ効率良く、前へ前へ。
 クレアが通り過ぎた後に血の雨が降る。
 それは残酷であったが、不思議と魅入られる何かがあった。
 クレアの動きは独特であった。
 小さいが鋭く、そしてしなやかな動作。
 自身の弱い体を、体力の無さを補うために練り上げた動きであった。
 その動きは強く、そして美しかった。
 カルロやかつてのヨハンのような圧倒的火力で相手をねじ伏せる強さとは違う。
 だから惹かれるのだ。とても珍しい稀有な存在だからだ。
 命を奪われる側の兵士達でさえ、心の奥底でそう感じていた。
 しかし、ヨハンだけは憎悪のような感情と、そこから生まれた忌々しい視線をクレアに向けていた。

(全体の動きが鈍くなった。士気が落ちている)

 これだから厄介なのだ。「武人」というものは。
 絶対的不利の中でも見るものを気圧し、そして魅了する。
 カルロもそうだった。人を惹きつける何かを持っていた。
 彼ら偉大なる者の一族と炎の一族はどこか似ている。
 何故彼らは惹かれあうのか。
 何故我々とはそりが合わないのか。
 我々と炎の一族、何が違う? 傍目には魔力が強いだけだ。
 やはり「武」なのか。その根底に流れる精神が彼らを引き寄せるのか。

(……くだらん)

 そこまで考えたところで、ヨハンは吐き捨てるように思考を切った。
 従わないならねじ伏せるまでだ。
 だからヨハンは、

「お前達、前に出ろ。あいつをこれ以上調子付かせるな。ただしカイルはここに残れ」

 と、カイルを除く四人の側近に命令を下した。
 命令に従い、四人が前に出る。
 それをクレアはすぐに察知した。

(強い力を持つ者が、ヨハンの側近が迫ってきている! 数は二、三……四人!)

 その大きな気配の接近は、視界の変化という形ですぐに現れた。
 正面を塞いでいた兵士達が道を開けるように左右に移動する。
 開けた視界の奥にはヨハンとカイルが、そして手前には並んで歩いてくる三人の姿があった。

(姿を現したのは三人? もう一人は……途中で別れた?)

 魔力感知能力を研ぎ澄ませて行方を調べる。

(……もう一人は兵士達の中に隠れている、か)

 兵士の影に隠れて攻撃するつもりだろうか。それにしてはかなり距離がある。あれでは射線を確保することすら難しいはずだ。
 ……しかし、警戒しておくに越したことはないだろう。
 そんな事を考えた直後、

(仕掛けてくる!)

 体に走った悪寒に、クレアは思わず構えを硬くした。
 まだ遠いと言える位置にいる三人が右手を前にかざしている。
 この距離で? 目からの情報は疑いを生んだが、クレアは魔力感知から得られた情報を信じた。
 それは正しい選択だった。
 三人の手が輝き、光弾が放たれる。
 速い、と思った時には既に目の前。
 身を反らしながら左後ろに一歩流れることで二つを回避。
 もう一つを左手の甲で体の外側に流し払う。
 はずだったが、

「っ!」

 左手の甲が光弾に触れた瞬間、クレアの体は弾かれるように大きく傾いた。

(重い!?)

 この距離でも当たり所が悪ければ即死しかねない威力。
 魔力を張った手の甲の上を滑らせる受け流しでは駄目だ。叩き払わなければ。
 よろめいた体勢を立て直す。
 足が再び地をしっかり捉えた時には、既に次の弾が目の前に迫っていた。
 この威力の光弾をこの早さで連射できるのか?! という驚きの言葉を心に浮かべる余裕もなく即座に回避行動を取る。
 一発目を叩き払い、その反動を利用して横に飛ぶことで残りの二発を回避。
 直後、クレアから一定の距離を開けて包囲の陣を作っている兵士達が光弾を放つ。
 体勢が崩れたままのクレアに、光弾が四方八方から襲い掛かる。
 これはマズイ、背中に走った悪寒から逃れるようにクレアは奥義をもって鋭く地を蹴った。

(!)

 瞬間、クレアの膝に激痛が走った。
 遂に来た。体が奥義の負荷に耐えられなくなってきている。
 しかし止まることは出来ない。あの強力な側近の次弾がもう来ている。
 膝からの警告を無視し、足を動かす。
 とにかく何か反撃を――走りながらそう思ったクレアは右手の中に光弾を生んだ。
 奥義によって腕を加速させ、勢いを乗せた光弾を三人の側近に向かって発射。
 クレアが放った光弾の速度は側近が撃つそれを凌駕していたが、

「?!」

 クレアの攻撃は「三人が」展開した防御魔法によってあっさりと止められた。
 その防御魔法はまるで光の壁であった。「盾」の一族が使うものと同じものに見える。
 三人が防御魔法を解除する。
 瞬間、クレアはそれを見逃さなかった。
 三人が手を寄り添わせていたことを。
 それはつまり、三人で協力して一枚の強固な防御魔法を展開した、ということだ。
 魔法を協力して発動する、クレアはそれが出来ることを知っていたが、実際に目にするのはこれが初めてであった。

(あれは硬すぎる。正面からでは抜けない)

 やはり雑魚の集団の中に飛び込み、敵を盾としながら進むのが良い。
 飛び交う大量の光弾を避けながら周囲を見回す。
 自分を包囲している円陣の前面には大盾兵が三列配置されている。この地に連れて来た全ての大盾兵を包囲のためだけに使っているように見える。
 その大盾兵達に光弾が炸裂しているのが頻繁に目に入る。
 側近が放つ光弾は私の足を狙った攻撃では無い。地に水平に放たれている。
 そのための大盾兵なのか。最初から味方に当たる事を前提にしているのだ。
 大盾兵の後ろに配置されている魔法使いが攻撃する際は、大盾兵達はしゃがんでいる。耳をすますと、そのための合図も聞こえる。
 道理で、先ほどから光弾が飛んでくる間隔に規則性があるわけだ。

(攻撃間隔に一切の乱れが無い。よく訓練されているようだ)

 それもそのはず、この戦法はヨハンが対カルロ戦のために編み出したものであった。敵の主力を包囲しつつ全火力を同時にぶつけることに特化したものだ。
 この時、戦場にはきれいな模様が描かれていた。
 クレアという点に向かって集まる大量の光の線。それは上空から見下ろすと光の芸術であった。包囲している兵士達が綺麗な円の形を取っていることがその芸術性を強くしていた。光線が目に映える夜であったならばさらに美しかったであろう。
 しかし、実際に攻撃されているクレアにとってはただの地獄だ。
 それでもクレアは避け続けた。危なげなく回避することが出来た。
 それは敵が正確にクレアを狙っていたことと、光弾の発射間隔にある程度の規則性があったからであった。
 そして、兵士の練度の高さを素直に認めたクレアに対し、この戦法を編み出した当のヨハンは難しい顔をしていた。

(追い詰めているのかどうかすらよく分からんな……)

 今戦っている相手はカルロでは無い。この手の相手、人間離れした機動力を持つ者に使うのはこれが初めてであった。

(そもそもあの速さの相手にこの包囲がいつまで機能するか疑問だな。大盾兵の列も一度の跳躍で越えられるかもしれぬ)

 ん? 「跳躍」?
 あるひらめきがヨハンの中に生まれつつあった。
 光明に目を見開くヨハン。対し、唯一そばに残された側近のカイルは賞賛の眼差しをクレアに送っていた。

(あの女、背中に目でもついているのか?)

 ここまで突破された場合に備えてクレアの動きの癖を探っていたカイルであったが、その眼差しは技に対しての羨望に変わっていた。
 完全に死角からの攻撃も回避している。
 それが偶然やまぐれではないことは動きが証明している。
 何か秘密があるはずだ――そう思ったカイルは些細な挙動すら見逃すまいと視線を鋭くした。

 カイルが行っているこの「観察」という行為こそ、アランやクレア、そしてリックが有している魔力感知能力を会得するための最適かつ最短の訓練である。
 相手を見る、相手の動きを読む、という行為が魔力感知能力を鍛えることに繋がっているのだ。
 クレアはいまは亡き父との組み手でそれを養った。
 クレアは父に対して相当回数負け越している。良いところまで詰めても、最後には結局体力差で押し切られる、または逃げ切られることが多かったのだ。
 だからクレアは考えた。自身の体力の無さを補うための立ち回りを考え、そしてその中で有効な反撃手段を編み出していった。クレアは相手の攻撃をいなして反撃するという、いわゆる後の先を基本とした戦い方を練り上げていったのだ。
 そしてそれはアランも同じであった。アランもディーノとの訓練で相当回数負け越している。アランもクレアと同じような道を歩んだのだ。総じて言えば、体術による接近戦を基本とする者は感知能力を習得し易い傾向にある。
 しかし、ヨハンの祖先達が提唱した魔力至上主義の台頭によって魔力感知能力を有する者はその数を減らしていった。単純火力と数を重視し、戦術もそれを基本とするのだから当然の変化であった。

 そして直後、それまで直立不動を保っていたカイルがほんの少し動いた。
 肩から足元までを隠し覆う大きな外套を身に纏っているゆえに分かりづらいが、確かに動いた。
 腹のあたりの布が「もぞり」と揺らめき、「チャラリ」という小さいが確かな金属音が鳴った。
 それを耳にしたカイルは自らを戒めた。

(思わず『構えてしまった』。興奮に心を揺らされたか)

 今はヨハン様を守るのが務め。この距離で攻撃態勢を取る必要は無い。
 カイルは姿勢と表情を元に戻した。
 その小さな挙動をヨハンは見逃さなかった。

(そういえばこいつも「武人」だったな……)

 このカイルという男はカルロを倒すために手に入れた。
 何故か? 炎と相性がいいからだ。
 しかしラルフを手に入れたことでカイルの存在意義はやや薄くなった。
 だが、ラルフの次に頼れる者は誰か、と問われればこのカイルの名前しか浮かばない。
 横目にカイルの表情を伺う。

(クレアと手合わせしてみたい、という顔をしておるな)

 ぶつけてみてもいいが……絶対に勝てる保障が無い。正直なところ、この男をここで失うのは惜しい。
 それについ先ほど別の手を思いついた。こちらのほうが堅実だ。
 ヨハンはそこで思考を一旦切り、声を上げた。

「直撃だけを狙うな! 移動先を予測して撃て! わからなければクレアの周りに適当にばらまくだけでもいい! 数を活かせ! それと攻撃間隔に規則性を持たせるな! 各自の判断で適当に連射しろ!」

 ヨハンの指示が響き渡る。
 直後、戦場は一変した。
 先ほどまでの規則的な美しさは無くなり、混沌が自己主張を始めた。
 クレアの周りを光弾が不規則に飛び交う。
 周辺の地面に次々と着弾し、土煙と土砂が舞い上がる。
 しかしそれを利用することは出来ない。すさまじい数と密度の光弾がすぐにそれを払ってしまうし、敵はもはや視界など関係無しにでたらめに撃っている気配がある。こちらを正確に狙っているのは側近だけだ。
 攻撃精度の平均値は大きく下がったが、こちらのほうがはるかに厄介だ。正確に狙ってくれたほうが避けやすい。回避先に光弾が置かれていないか意識しつつ、側近からの攻撃を捌かなければならない。
 クレアがそんなことを考えた直後、場にヨハンの声が再び響いた。

「お前達は足を狙え! 当てられなくてもいい! 地面をえぐって足場を崩せ!」

 それは前に出ている三人の側近への指示であった。
 これに三人は少し戸惑う様子を見せた。
 ここからでは地面をえぐるほどの威力は出ない。本当に地面に穴を開けようと思ったら、クレアの周辺の地形を変えようとするならば、接近戦と言えるくらいの間合いまで近づかなければならない。
 しかしあんなに速く動ける相手に近づくのは自殺行為だ。
 だから三人は少しだけ前に出た。
 形だけ従ったように見せているだけである。が、指示を出した当のヨハンもそれで良いと思っていた。あの三人に地面をえぐるなどという大層なことが出来るとは最初から思っていなかったのだ。
 大地は硬い。この距離では小さなくぼみが出来る程度だろう。ラルフのように穴を開けることは出来ない。
 だがそれでも構わない。クレアに足元が危ないと意識させるのが狙いなのだ。だから「クレアにも聞こえるように」指示を出した。
 しかし次の指示はクレアの耳に入れるわけにはいかない。
 ヨハンは手近な兵士を一人呼び付け、次の命令を耳打ちした。
 兵士は深い頷きを返した後、指示を伝えるため隊列の中に駆け込んでいった。
 ヨハンはその背を見送った後、視線を三人の方に戻した。
 それを避けるためにクレアは時々小さな跳躍をしている。
 その様を見たヨハンは心の中で「良し」と頷きながら声を上げた。

「魔法使いは一列前に出ろ! 最前の大盾兵と並んで防御魔法を張れ!」

 最悪の展開は前列の壁を「正面から」突破されることだ。前面は厚くしておいたほうがいい。
 これもクレアに聞こえるように声を上げた。壁は硬い、正面から突破するのは難しいと思わせるためだ。
 続けてもう一つ号令を飛ばす。

「左翼は十歩前進しろ! 包囲を縮めるのだ!」

 進め! という部隊長の声を合図に左翼が前進を開始する。
 軍靴の音が場に鳴り響く。
 その音は綺麗に重なっていた。壮大な足音が十回鳴り響いたようにしか聞こえないほどに。歩幅も全員一致しており隊列に乱れは一切無い。
 包囲は真円の形では無くなり、左側が少し欠けた月のような形になった。
 結果、左翼側からの攻撃密度が増し、クレアは密度の薄い右翼側に流れた。
 それを見たヨハンは薄い笑みを浮かべた。

(そうだ、右翼側に寄れ)

 これまでの動きからクレアが雑魚との乱戦に持ち込みたがっていることは分かっている。雑魚を盾にしながら私に接近し、一撃見舞おうとでも考えているのだろう。

(浅はかな)

 ヨハンは心の中でクレアのことをあざ笑った。
 今まで私が戦いのことについてどれだけ考えてきたと思う?
 お前達偉大なる一族が「武」とかいうものに執着している間に、我が一族はもっと大きなものを積み上げてきたのだ。
 確かにお前達は強い。それは認めよう。もしかしたら、お前は私の元にたどり着けるかもしれない。
 しかし私にその拳を当てることは出来ない。四人の側近とカイルがそれを許さない。三人が壁となり、一人が狙い撃ち、そしてお前達と同じ「武人」であるカイルが立ちふさがるのだ。
 はっきりいって鉄壁だ。本当にそう思っている。あのカルロでも一人では突破出来ないように作り上げたのだから。

「……ふふっ」

 心に満ちる優越感に含み笑いを漏らす。
 だが直後、その心地よい感覚に水が差された。

(……しかし、本当は「盾」の一族の人間をあの三人のところに配するつもりだった)

 同じ魔力至上主義の道を歩んできた「盾」の一族であるが、私に忠誠を誓うことは無かった。我が一族の傘下に入ることを頑なに拒否した。

(……まあ、いい)

 今は考えても仕方の無いことだ。
 今はこの戦いを終わらせることに集中すべきだろう。

(そうだ。そしてその後は……)

 国を強化しつつ炎の一族をねじ伏せ、『次』に備えなくては。

(しかし、あの『使者』が言った事、あれは本当なのだろうか?)

 全面的な信用は難しい。素性がよく分からない人間だったからだ。
 だが、あの使者が言ったことを基本に考えると色々なことに辻褄が合う。そも、我が祖先が魔力至上主義の道を選んだのは『それ』が理由なのだから。
 平和ボケしている場合では無い、国を強くしなくてはならない、その願いから我が祖先は声を上げたのだ。

(しかし、我が祖先がこの道を選んでからもう数百年経っている。『そいつら』はまだ我々のことを狙っているのだろうか?)

 疑問に思考が停止する。
 情報が足りない。今は答えの出ない問いだ。
 そして、意識が戦いからそれはじめていることに気付いたヨハンは、すぐさま思考の向きを修正した。

(さて、そろそろあいつが位置についた頃か?)

 ある者の位置を確認する。

(……あそこか)

 悪くない位置だ。射程ぎりぎりなのが少し気になるが。

(さて、後はクレアの動き方次第だな)

 視線を移す。
 クレアは光弾を撃ちながら走り回っていた。
 しかしその動きに陰りが見える。

(ようやく疲れてきたか?)

 このまま倒れてくれるならばそれはそれで良し。
 ヨハンの口元が緩み、顔全体に穏やかな表情が浮かび上がる。
 対し、クレアの顔は苦痛に歪んでいた。
 奥義の反動が全身に痛みを生んでいる。
 その口は粗い呼吸を繰り返している。
 もう体力が底を尽きかけている。
 クレアは迷っていた。一か八かの正面突破を仕掛けるかどうか。
 雑魚を盾にしながら進む手は安全だが、運動量がかなり増える。
 今の残体力で遠回りが出来るかどうか……正直なところ、分が悪いと判断せざるを得ない。
 しかし正面突破もかなり分が悪いのは確かなのだ。
 だから迷っている。動きを小さく、かつ緩慢にして体力を温存しながら、飛び道具を返すということを続けている。
 だが今のままでは事態は悪化していくだけなのは明らかだ。
 なぜなら――

(大盾兵の列が崩れる気配が無い!)

 最前の者を光弾で倒してもすぐに後列の者が入れ替わりに前へ出てくるのだ。逆に倒された者は後列で体勢を立て直し次の出番を待っているようだ。
 これでは一度に大勢を倒す手段が無ければ隊形を崩せない。それはつまり、味方のいない今の自分には不可能であるということだ。
 選ぶしかない。決断するしかない。

(ここはやはり、)

 そして、クレアが選んだ選択は、

(大盾兵の列を飛び越えて、隊列の中に飛び込む!)

 ヨハンが望む答えであった。
 クレアが視線を移す。
 その目が映す先はやはり右翼側。攻撃の密度が高い左翼側は選択肢に入らない。
 その先にヨハンが用意した備えがあると知らず、クレアは駆け出した。
 迫るクレアに向かって魔法使いたちが光弾を放つ。
 その時、ヨハンはクレアを凝視しながら心の中で叫んだ。

(踏め! そして跳べ!)

 クレアはヨハンが願った通りの行動を選んでしまった。
 数発の光弾を足場に高く舞い上がる。
 瞬間、

「今だ、撃て!」

 クレアの耳に入ったのはヨハンの声。
 クレアはすかさず視線を三人のところに向けた。

(!? 違う!)

 三人への指示では無い。三人は構えていない。
 刹那遅れて、クレアの魔力感知がある情報を拾う。

(何?!)

 視線を移す。
 直後、クレアの瞳が捕えたものは、

「! 四人目!?」

 いつの間にか右翼の隊列の中に移動していた四人目の側近の姿。
 邪魔にならないようにか、周囲の兵士達はその男から少し距離を置いている。
 しかし、何より目を引くのはその構え。
 まるで武術のような、正拳突きを放つかのような型だ。
 それを見たクレアは反射的に防御の姿勢を取った。
 この時、クレアは足を防御に用いることを選んだ。選んでしまった。光弾を踏むために込めた魔力をそのまま防御に利用しようと思ったのだ。

「!」

 そして刹那の後、クレアの顔は驚きに染まった。
 突き出された男の拳が輝いた、そのようにしか見えなかった。
 クレアの感知能力を含めた認識力はその閃光の速さに対し大きく遅れを取った。攻撃が来ている、という判断すら成されていなかった。
 しかしクレアの体は勝手に動いた。防衛本能がそうさせたのだ。積み重ねた修練の成せる技であった。
 クレアの右足は薙ぎ払うように振るわれ、魔力を込めたそのつま先は閃光の先端を捉えたが――

「っ!?」

 直後、クレアの右太腿に熱く鋭い痛みが走った。
 クレアの蹴りは閃光の軌道を僅かにそらす程度にとどまり、曲がった閃光はクレアの太腿をなぞりながら通り抜けていったのだ。
 閃光が残した煌びやかな光の粒子の中に鮮やかな赤色が加わる。
 クレアはその残酷な色を空中で撒き散らしながら、姿勢を大きく崩した。
 傍目にはクレアに閃光が直撃したようにしか見えなかった。が、場にただ一人、閃光と蹴りのぶつかり合いをはっきりと視認出来ていた者がいた。カイルである。

(致命傷には遠いが……)

 この時点で、カイルはこの戦いの大勢が決まったことを理解した。
 そして、空中で制御を失ったクレアであったが、かろうじて受身は取った。
 太腿の傷はそのままにすぐさま地を蹴り、ある目標に向かって突進する。
 目指す先は閃光を撃った男。あの男は危険だ。ここで倒しておかねばならない。
 が、クレアの前進はすぐに失速を始めた。やはり赤く染まった右足の動きが鈍い。
 しかしそれでもクレアは立ちふさがる雑魚を蹴散らし、閃光の男に迫った。
 男は既に閃光の構えを取っている。
 閃光を見てから回避するのは難しい。だが、拳の動きなら別だ。
 クレアは体を傾け、左前方に進路を変えた。
 それを見た男が拳を前に突き出す。
 拳が伸びる先、閃光の狙いはクレアの手前。
 瞬間、クレアは奥義を用いて進路を右に急転した。
 放たれる閃光。しかしその線上に目標の姿は既に無い。
 真横を通り抜ける閃光の風圧を感じながら、クレアは貫手を構えた。
 男はもう目の前だ。
 この時、カイルは閃光の男の命運が尽きたことを察した。
 自衛する手段に乏しいからだ。あいつの役割はヨハン様に近づいた者を陰から狙撃すること。そしてそれしか出来ないのだ。あのヨハン様が褒めるほど射程のある閃光魔法を使えるが、それ以外のことはまるで無能。防御魔法すら碌に使えない。
 そして、結果はカイルが予想した通りのものとなった。
 クレアの貫手が一閃。間も無く、閃光の男は鮮血を散らしながらその場に崩れ落ちた。
 それを見たカイルはその技に賞賛を送った。

(お見事。しかし……)

 同時に、クレアの命運も尽きたことをカイルは理解していた。

(ここまでだな。あの足の傷では時間の問題だろう)

 そして、賞賛を送ったカイルに対し、ヨハンの方は毒を吐いていた。

(あれで仕留められんとは……馬鹿者が)

 他人に聞こえぬ程度の舌打ちをする。

(まあいい。また代わりを探すか育てればいいだけのこと。とりあえず、この戦いは勝った)

 あの男を育てるのに五年以上費やしたという事実から目を背けながら、ヨハンは視線をクレアに戻した。
 そしてそれを見たヨハンは表情を和らげた。
 クレアに光弾が当たったのだ。
 光る手甲で防御されている。しかし、当たったのだ。受け流されたわけでも無い。これは大きな変化だ。
 貫手の鋭さは変わっていない。が、肝心の回避にかつての輝きが全く無い。

(これなら、五分も持たずに終わりそうだな)

 表情をさらに緩ませつつあったヨハンであったが、次の瞬間には元の険しい顔つきに戻っていた。
 クレアが構えを変えたのだ。
 脇を少し開きながら右腕を前に出しつつ、真上に膝蹴りを放つように、右膝を鋭利に折り曲げながら右足を浮かせたのだ。左腕は右腕に添えるように前に出されている。
 その一本足での立ち姿は、言葉で表せば「細い」。この一言に尽きる。
 これは「片羽の構え」。偉大なる大魔道士が愛した構えの一つであり、細く見せることで被弾面積を小さくしつつ、反撃に重きを置く構えである。
 しかし一族の歴史を振り返ってみてもこの構えの愛用者は少ない。なぜならば、この構えの発案者は片腕であり、技の構成と動きもそれに準じたものであったからだ。上げた右足を腕の代わりとして扱う構えなのだ。
 当然片足になるので機動力は落ちる。それを補うための線の細さであり、技の構成も防御と反撃に重きを置いたものになっているのだ。
 クレアはこの構えに執着していた時期があった。
 父に勝ちたいと願っていた若き頃、屋敷の文献からこの構えを知ったクレアは体得と研鑽に相当の時間を費やした。防御と反撃に重きを置くという点に強く惹かれたのだ。
 その過程でクレアは足による魔力制御の精度を飛躍的に向上させた。
 でなければ機動力が著しく損なわれてしまうだけでなく、結果的に防御も脆くなってしまうからだ。一本足で鋭く動き、敵の攻撃を受けた際に姿勢を崩さぬようにするには、強靭な筋肉と、つま先一点に魔力を集中させて維持する高度な制御能力が必須なのだ。思い返せば、魔力感知を体得したのもその頃である。

「……」

 光弾が飛び交う中、クレアの意識は澄んだ水のように透明で静かであった。
 この状態を維持するにはそうでなければならない。四方八方から来る光弾を感知しつつ、軸足である左足のつま先に意識を向けるには、雑念に気を使う余裕など無いのだ。
 迫る光弾を流し、時に受ける。
 その際、左足のつま先に魔力を集中させ、地面に食い込ませる。そうしなければ踏ん張れないのだ。
 そして時に動く。
 指先から魔力を放出し、側近が放った強力な光弾を避ける。
 移動の際は魔力制御を指単位で行う。
 各指から放出する魔力の量に強弱をつけることで、移動方向を制御するのだ。
 短いが鋭い移動に、クレアの服が翻る。
 真上に突き上げていた右膝に引っかかっていた裾が滑り落ち、太腿があらわになる。
 その色は悩ましい肌色ではなく無残な赤だ。
 しかし、その残酷さがクレアの美しさをますます際立てた。

(まだ魅せてくれるのか)

 カイルもその虜となっている者の一人である。
 この戦いはもうすぐに終わるものだと思っていた。
 しかしクレアは粘っている。
 今のクレアの動きに以前のような激しさは無い。しかし、今のクレアには洗練された美しさと、どことなく感じさせる儚さがある。
 ただの悪あがきだと言えるだろうか? 
 否。彼女は輝いている。武人が戦場で放つ輝きだ。
 クレアはその輝きを維持したまま、少しずつこちらに近づいて来ている。
 もしかしたらここまで辿りつけるのではないか?

(いや……やはり、それは無い)

 防御出来ているとはいえ被弾が増えていることに間違いはないのだ。硬くなっただけとも言える。やはり時間の問題であろう。側近の光弾に当たって姿勢を崩したが最後、そのまま一気に終わらされる可能性がある。

 そう、悲しいことに時間の問題なのだ。

(……)

 哀れだ。それしか言葉が浮かばない。
 このままでいいのだろうか?

「……」

 このまま数の力によって虫けらのように死んでしまうというのならば、せめて――

「――っ」

 心に浮かんだその言葉に、カイルは息を詰まらせた。
 それをやりたい、という衝動が胸を突いたのだ。
 理性が即座にその衝動を抑えにかかった。馬鹿げた考えだ、と。
 時代に合わぬ古臭い行為だ。それに無意味。放って置くだけで終わるのに、なぜわざわざ自分の身を危険に晒す必要がある? ヨハン様もお許しにならないだろう。
 この弁に、本能が反撃に出た。
 それはたったの一言であった。
 だが、その一言は理性が並べた全ての文句を吹き飛ばした。
 その言葉とは、

「しかし、そこには名誉がある」であった。

 そうだ名誉がある。
 あれだけの武人と、名のある者と戦うこと、それは名誉だ。
 それが手に入れば、もしかしたら、今の境遇を変えることが出来るかもしれない。
 カイルがそう思った瞬間、

「……ヨハン様」

 思わず、言葉が口から飛び出していた。
 なんだ? というような視線を主君が向ける。
 その面倒そうな視線に対し、カイルははっきりと自分の欲を口に出した。

「一つ、お願いが御座います」

   ◆◆◆

「!?」

 直後、クレアは驚きに足を止めた。
 敵の攻撃が止まったのだ。
 場には太鼓の音が鳴り響いている。

(この合図は……)

 太鼓の拍子はどこかぎこちない。
 それもそのはず、この合図は滅多に使われないものだからだ。演奏者も慣れていないのだ。
 そして、その合図の意味は、

(……一騎討ち?!)

 であることをクレアが思い出した直後、目の前に一人の男が現れた。
 それは赤毛の男。ヨハンの真横についていた者だ。
 男はクレアに対して一礼した後、口を開いた。

「あまりに多勢に無勢でしたので、出来るだけ静観するつもりでしたが……どうやら私はあなたの技に心を奪われてしまったようだ」

 奇妙な理由を述べた後、男は名乗った。

「私の名はカイル。ヨハン様に飼われるただの犬だが、御相手願いたい」

 その眼から、カイルが真剣であることをクレアは察した。
 罠の可能性は捨てきれない。一対一であると思わせて、後ろから攻撃することは十分に考えられる。
 しかし彼の態度は丁寧だ。
 だからクレアは、

「……わかりました。このクレア、偉大なる一族の者として、その名誉をかけてお相手致しましょう」

 と、丁寧な言葉を返した。

   ◆◆◆

 その様を、バージルは屋敷の中から見つめていた。
 その瞳は言葉にし難い感情を湛えている。良い感情と暗い感情が混じっている。
 この戦いでバージルの瞳はその色を様々に変えていた。
 ある時は憎悪に染まり、ある時は驚きに見開いた。今は期待感の色が強い。
 バージルはクレアのことを応援していた。真剣に。あのいけ好かないヨハンを倒して欲しいと、本気で思っていたのだ。
 ことあるごとに我が家に難癖をつけてきたヨハン。
 ある時は軍事予算の縮小、またある時は別宅の取り潰し、土地の一部没収、それら全てが「魔力を飛ばせない」という理由からだ。
 あげくの果てには軍門に下れとぬかしてきた。
 ゆえにバージルはヨハンのことを嫌っている。憎んでいると言ってもいい。
 そんな中、唯一我が家に暖かい手を差し伸べてくれたのが、この偉大なる一族だ。
 援助は一度だけだ。しかし、それでも強く心に残っている。
 強くなりたいと願った時、この屋敷のことが一番に頭に浮かんだのは必然だったのかもしれない。

 バージルは知らない。
 盾の一族を軍門に加えるようヨハンをそそのかした者がいることを。
 両家の結束強化、魔力至上主義という建前のためなど、都合の良い理由をその者は並べた。
 これに対しヨハンは少しだけ迷った。盾の一族が不快感を抱くのは間違いなかったからだ。
 しかし、最後には悪い案では無いと、ヨハンは判断した。してしまった。盾の一族と資金が同時に手に入る、そう判断してしまったのだ。

 この国は分裂し始めている。少しずつ着実に。
 そしてそのひび割れにサイラスが決定打を叩き込もうとしていることをヨハンは知らない。

   ◆◆◆

 クレアは構えたまま相手の出方を待った。

「……?」

 しかし、仕掛けてくる気配が無い。

(まさか、)

 こちらの体力が回復するのを待ってくれている?

(もしそうならば――)

 クレアは出来るだけ隙を見せないように、慎重に右足の傷に手を伸ばした。

「……」

 対峙するカイルはやはり動かない。
 長い外套に全身を覆われているせいで目では分からないが、戦闘態勢を取っていないことが魔力感知から判断出来る。
 この男はどうやら本当にこちらの準備が整うのを待ってくれているようだ。
 ならばその情に素直に甘えさせてもらうとしよう。傷の手当をしなくては。
 しかし、このままただ待ってもらっているだけでは、このカイルとやらの立場が悪くなることに繋がるかもしれない。
 ここは適当に話でもして時間稼ぎをしよう。そう思ったクレアは口を開いた。

「……一つ尋ねてもよろしい?」

 クレアの意を読んだカイルは「どうぞ」と即答した。

「何故、一騎討ちを? 名誉をかけて一対一で戦いたいなど、今時珍しい」
「……」

 これにカイルはすぐには答えなかった。言い辛いことなのだろう。
 暫くして、カイルはゆっくりと口を開いた。

「……少し近道をしたいと、思ってしまったのです」
「近道とは?」

 要領を得ない答えに、クレアはその意を尋ねた。

「……」

 これにもカイルは押し黙った。
 暫し後、

「……本心を申せば、今の境遇は私の本意ではないのです」

 仕えたくてヨハンに仕えているわけではないという意味だろう。少しぼかした言い方をしたのは一応の主人であるヨハンのことを意識したからか。
 カイルは軽く咳払いをするかのように、喉を小さく鳴らした後、言葉を続けた。

「これだけの観衆がいる中で偉大なる一族の者に一対一で勝った、その功績と名誉が手に入れば新たな道を切り開けるかもしれない、そう思ってしまったのです」

 そう言った後、カイルは右手を前に伸ばした。おしゃべりと休憩はここまでだということだろう。
 その手はうっすらと発光している。
 しかしクレアの意識は外套に隠れた左手に向いていた。

(何かを握っている?)

 間違いなく武器だろう。動きを隠すためと思われる長い外套から察するに、奇と虚を突きやすい暗殺武器、いわゆる暗器だろうか。
 クレアがそんなことを考えながら傷の応急手当を終えた直後、カイルが再び口を開いた。

「では、そろそろ始めてよろしいか?」

 これにクレアが頷きながら、

「いつでもどうぞ」

 と答えた直後、カイルの右手が眩しく輝いた。
 開始の宣言として放たれた光弾をクレアが受け流す。
 その瞬間、

「!」

 クレアの目が見開いた。

(冷たい?!)

 光弾が冷たかったのだ。まるで氷の塊に撫でられたかのような感覚。かなり強力な冷却魔法が混ぜられた光弾だ。
 この一発だけでクレアはカイルが何者なのかを察した。そして同時にその左手に握られているものに見切りをつけた。

(その左手にあるものは、恐らく……)

 その左手から放たれるものを想像しながら、クレアは地を蹴った。
 同時にカイルが動いた。
 大きく一歩踏み込みながら、左手を外気に晒す。
 すると外套が翻り、厚みのある布の下からあるものが顔を出した。
 金属特有の光沢を放つ細長いもの、それはクレアが予想したとおり、

(やはり、鎖!)

 であった。
 先端には重量感のある分銅がついている。
 横手に放たれたそれは、カイルの左手を支点とした楕円の軌跡を描きながら、クレアの右頬に向かって飛んで来ていた。
 これに対しクレアは右手で防御魔法を展開した。
 減速はしない。このまま一気に間合いを詰め、左手による貫手を見舞う。
 分銅がついているとはいえ大した速度の攻撃では無い。この程度ならば破られることは無い、そう踏んだのだ。
 確かにそれはその通りであったのだが、

「!?」

 直後、予想だにし得ないことが起こった。
「かつん」という音と共に、分銅の軌道が変わったのだ。
 地に水平に走っていた分銅は突如真上に跳ね上がった。
 何かにぶつかったかのような変化だ。
 上への放物線の軌道に変化した分銅は、そのままクレアの防御魔法を飛び越え、彼女の頭上に達した。
 その瞬間、カイルは左手首を振り下ろすように、鋭く返した。
 引っ張られた分銅は鞭の先端のようにしなり、クレアの脳天目掛けて振り下ろされたが――

「破っ!」

 直後、気合と共に真上に放たれたクレアの左掌底打ちによって叩き返された。
 しかし安堵する間も無く、

「!」

 クレアの目が見開く。
 視界を埋めるように迫る白。
 光弾だ。それも一発では無い。連射だ。

「っ!」

 凄まじい衝撃がクレアの右手に伝わる。
 かなり重い。他の側近達より一段上の威力だ。
 そして防御魔法越しに凄まじい冷気が伝わってくる。展開している右手が痛いほどだ。
 このままではすぐに破られる、そう判断したクレアは左手を添えて防御魔法を強化しながら、後方に跳んだ。
 同時に、カイルも距離を取るために後ろに地を蹴る。
 互いの距離が開幕の時と同じくらいに開き、仕切りなおしとなった。
 構えを整えながら、クレアは先に起きた奇妙なことについて思考を巡らせた。
 どうして分銅の軌道が変わった?
 一つ確かなのは、軌道が変わった瞬間、「何かにぶつかった」かのような音が聞こえたこと。
 それは自分の防御魔法にでは無い。明らかに防御魔法に触れる前に軌道が変わった。
 何か見落としていることがあるはずだ。思い出せ。
 まず、あの男は大きく一歩踏み込みながら、分銅を投げた。

(……? 妙ね)

 大きく一歩踏み込んだにもかかわらず、あの程度の速度だったのか?
 目で追える速度だった。あれでは踏み込んだ意味が薄い。狙いに対して正確に飛ばすためだけに、手首を利かせずに踏み込みの勢いだけで分銅を放り投げたような感じだった。
 思い出せ。何かを見落としている。

(……!)

 そして、クレアはあることを思い出した。
 影だ。軌道が変わった瞬間、音が鳴った瞬間、分銅に小さな影のようなものがぶつかっていた。
 はっきりとは思い出せないが、たぶん石だ。音の質感も石のそれだった。あの男は鎖を左手で投げると同時に左足を前に出し、そのつま先で石を蹴り上げたのだ。

(分銅を投げる前から、防御魔法を展開されることを予想していた……?)

 そうとしか思えない立ち回りだ。

 クレアの考えは正解であった。
 カイルの鎖は正面を攻撃するためにあるものでは無い。正面はあくまで意識させるだけなのだ。前を攻撃するだけなら光弾のほうがいい。そもそもただの鎖では強力な防御魔法を突破出来ないことなど百も承知なのだ。
 鎖は相手の虚を突くためのもの。その技は相手の側面や頭上、そして足元を攻めるものばかりで構成されているのだ。

 そして、対するカイルは先の一撃を防いだクレアを賞賛した。

(素晴らしい反応だ。並の相手ならば今の手は必殺なのだが。さすが、と言わせてもらおう)

 が、その眼差しに敬意の色が表れる前に、カイルは眉に険しさを戻した。

(いや、むしろそうでなくては。でなければ勝利に名誉がついてこない)

 構えを整えながら先のクレアの突進を思い出す。

(しかし本当に速い。遠くから見た時の印象とはやはり違う。回りこみは常に警戒しなくては。ここは範囲が広い円の動き、なぎ払いを中心にして攻めるべきか)

 普段ならば動作量が少ない点の動き、剣で言うところの突き攻撃を中心にする。
 カイルはいつでも水平に振れるように、鎖を持つ左腕を横手に構えた。
 右手は迅速な防御魔法の展開と光弾による牽制のため、前にかざしておく。
 そしてそのまま右足を前に出し、左足を後ろに引く。
 相手に対し斜めを向いた半身の構えに近い姿勢だ。
 対するクレアは片羽の構え。
 クレアは仕掛けてくる気配を見せない。
 クレアは考えていた。

(前に突き出た右手を狙うか、それとも鎖の破壊を狙うか――)

 クレアは迷っていたが、

(いや、まずはあの鎖の動きに慣れるべきか。彼が鎖の扱いに関して尋常ならざる錬度を有していることは間違いない)

 ここは一度見(けん)に徹する、そう判断した瞬間、

(来る!)

 カイルが動いた。
 前にかざした右手が眩く輝く。

「!?」

 直後、クレアの表情が変化した。
 驚きに目が見開く。
 その瞳には四個の光弾が映っていた。
 が、その眼差しに緊張の色は無い。
 その光弾のいずれもが小さかったからだ。

(散弾?!)

 光弾を撃つ際に五指を用いて握り砕きながら放ったようだ。
 こちらの機動力を警戒して避けにくい攻撃をしたつもりなのだろうか。確かに避けにくいのだが、脅威では無い。
 クレアは展開した防御魔法でそれらを何事も無く受け止めた。
 防御魔法に揺らぎは一切無い。一発の威力が低すぎるのだ。
 小さな衝突音がクレアの耳に響く。
 その数は「三つ」。
 あと一つは? それを目で探し始めるよりも早く、クレアの足は後ろに地を蹴っていた。
 跳び下がったクレアの目の前を右から左へ分銅が通り抜けて行く。
 どうやって真横から来た?
 その答えはすぐに浮かんだ。

(最後の一つを使って跳弾させた?!)

 カルロが使った技と同じである。カイルは散弾の一つを反射壁として使ったのだ。
 カイルが左腕を引き、鎖を手元に引き寄せる。
 それに合わせてクレアは踏み込んだ。鎖が彼の手元に戻り切る前に、そう考えたのだ。
 直後、カイルの右手が発光した。
 迎撃の光弾を放つつもりだろう、クレアはそう思い、右手に魔力を込めた。
 その予想は当たった。
 が、

「!?」

 その狙いはクレアでは無かった。
 光弾は引き戻る鎖に炸裂した。
 細長く伸びたその身が衝撃に波打つ。
 波は先端の分銅に伝わり、その凶器を鞭の先端のようにしならせた。
 返す刃のように、クレアの眼前を右から通り過ぎたばかりの分銅が、今度は左から襲い来る。
 これをクレアは防御魔法で受けようとしたが、その光の膜が広がり切るよりも速く、分銅はクレアの側面に回り込んだ。
 マズい、という言葉が頭の中に浮かび上がるよりも早く、クレアは展開中の防御魔法を分銅の方へ向けながら、後ろへ地を蹴った。
 この反射的な行動が幸いした。
 いまだ広がり切らぬ防御魔法の端が鎖に触れたのだ。
 そこを接点として鎖は僅かに折れ曲がった。
 弧を描く分銅はその軌道を変え、

「あぐっ!」

 クレアの左肩に炸裂した。
 痛みに顔を歪めながら大きく跳び下がる。
 そして鎖が絶対に届かぬ距離まで離れてから、クレアは左肩の状態を確認した。

(……骨に少しヒビが入っただけのようね。良かった。これならばまだ拳を振れる)

 安堵しながら、クレアは鎖を手元に戻したカイルを見つめた。

(今の切り返しは完全に予想外だった)

 危なかった。そして恐るべし。
 光弾を利用することで鎖をあのように操るとは。
 彼は鎖を手元に戻す必要が無いのだ。光弾さえ撃てればどんな状態からでも攻撃が可能なのだと思ったほうがいい。もしかしたら、鎖を握る必要すら無いのかもしれない。

(まるで生き物のようだ)

 ふと浮かんだこの言葉に、クレアは感じるものがあった。

(……そうだ、あれは最早腕の延長だと考えるべきだ)

 ただの長い武器だと考えてはならない。あれは数え切れないほどの間接を有する長い腕なのだ。先端の分銅は硬く握り締められた拳なのだ。
 クレアは構えを整えながら、カイルの次の攻撃を待った。
 対するカイルは、そんなクレアの様子を見ながら次の手を考えていた。

(惜しい。もう少し分銅が深く回りこめていれば、その後頭部を叩き割れていたのだが)

 先の一撃はほぼ無傷に終わってしまったように見える。

(しかし、良くない流れだ)

 出来れば今ので決着を付けたかった。ここからは徐々に不利になる可能性が高い。

 鎖使いにとって最も重要なのは初手である。
 鎖自体は強力な武器とは言い難い。はっきり言って使いにくい。強いのは技の方だ。
 だが、どんな技も何度も見れば慣れが生まれる。そして技を全て見切られた時が、鎖使いの最後の時となるのだ。
 だから隠す。長い外套で動きが見えないようにする。
 そして小出しにする。次の技を披露するのは再び深く踏み込まれた時でいい。
 逆に言えば、一度見せた技に関しては勿体付ける必要性があまり無い。
 従って、ここからは手数を重視した戦法に切り替えることが出来る。間合いぎりぎりから鎖を振り続けるのだ。

 カイルは「じり」と間合いを詰めた後、その鎖を放った。

   ◆◆◆

 その後、二人の戦いは打って変わって激しいものとなった。
 二人の間を光弾が飛び交い、その中を鎖が跳ね回っている。
 鎖を振るカイルの左腕は霞んで見えるほど速く動いている。
 そして、それ以上にクレアの動きも激しい。
 クレアは右へ左へ高速移動を繰り返している。
 影が伸びたように錯覚するほどの速さ。だが、クレアの動きを追う分銅はそれ以上に速い。
 素人目には分銅の動きはほとんど見えない。ゆえにクレアのどの動きが回避行動なのか判別がつかない。
 カイルが圧倒しているように見える。クレアがあまり反撃しないからだ。
 素人目にはカイルが勝利に近づいているように見える。攻め続けていれば、当たるまで手を出し続ければいいのだと思ってしまう。
 普通の魔法使い同士の戦いならばそうだ。しかしこの戦いは違う。
 戦っている二人以外に、そのことに気付いている者が一人いた。
 それはヨハン。

(間合いを維持したまま攻め続けてはいるが……)

 ヨハンは今のままではカイルの攻撃が当たる望みは薄いと感じていた。
 むしろその可能性はどんどん低くなっているように思える。
 クレアの動きに軽快さが戻ってきているからだ。緊張と驚きから来る硬さが抜けてきている。
 それはつまり、あの鎖の動きに慣れて来ているということ。
 偶然か何かで戦いに変化が起きない限り、カイルの攻撃は当たらないように思える。
 ヨハンは心の中で舌打ちしながら、カイルに対して毒を吐いた。

(まったく、一騎討ちなどと……とんだ面倒を始めてくれたものだ)

 カイルは普段は静かであるが、時々こういう武人らしい一面を見せ、声を上げる。
 そしてそういう時に限って厄介な事態になることが多かった。
 ゆえにカイルに仕事を何でもかんでも任せることは出来なかった。特に、汚い仕事に関しては強い拒否反応を見せた。カイルは「正々堂々」というものを重んじ過ぎている気配がある。
 そんなカイルの気質が、今この場で「一騎討ち」という形で表れてしまったわけだ。
 却下することも出来た。そうすべきだったかもしれない。
 しかしもう一つ厄介なことに、カイルは反抗心も強いのだ。その証拠に私に対して心から忠誠を誓っているわけではないと、先ほどはっきりと口にしおった。
 反抗は一度や二度では無い。そしてその度に、握っているカイルの「弱み」を使ってきた。
 しかしそれも限界が見えてきている。最近、カイルが私に黙って調べ事をしていたことが分かった。
 何を調べていたのかは考えなくても分かる。この戦いが終わったらすぐに対処せねばならない。
 まったく……この気質さえなければ、と何度思ったことか。頼りになる男であることは間違いないのだが。

「……ふう」

 憂鬱さにため息を吐きながら、ヨハンは目の前の戦いに意識を戻した。
 さて、どうするか。
 圧勝ならば何の文句も無かった。しかしどうも雲行きが怪しい。
 ここでカイルを失うのは惜しい。ならば保険はかけておくべきか。
 そう考えたヨハンは、

「お前達」

 と、離れたカイルの代わりに傍に呼び戻した三人の側近に声をかけた。
 命令ならなんなりと、というような顔で三人が振り向く。
 そんな三人に、ヨハンは指差しをしながら口を開いた。

「二人前に出ろ。一人はクレアの側面について、もう一人は背後につけ」

 何故? と聞きたげな顔を三人が見せると、

「カイルが危なくなったらすぐにクレアを撃て。いいな?」

 本当は聞かなくても分かっていた内容を、ヨハンははっきりと口にした。
 これに三人が少し戸惑う様子を見せると、ヨハンは続けて口を開いた。

「わかったな?」

 重みが効いたその口調に、側近達は頷きを返すことしか出来なかった。

 はっきり言ってヨハンのこの選択は間違いである。もしそれでカイルが命拾いしたとしても、ただでさえ薄い忠誠心がさらにか細くなるだけだからだ。
 カイルの気質はクリスと少し似ている。立場と境遇が違うゆえに表面に出る性格は異なるが。

   ◆◆◆

 そして、戦況はヨハンが予想したほうに流れていった。
 しかしその進展は遅かった。
 クレアは魔力を伴わない攻撃の対処がやや不得手であった。普段魔力感知に頼りすぎているせいである。リックと比べると動体視力の鍛えが甘い。
 それでも少しずつ慣れてはきている。その証拠に、右手と右足だけでそれなりに捌けるようになってきた。左手を攻撃に回す余裕が生まれつつある。
 しかし何より、この射程ぎりぎりの距離は安全圏であるということが大きい。
 後退するだけで簡単に避けられるからだ。あれは飛び道具では無い。使い手自らが踏み込んで来ない限り、これ以上伸びてくることは無いのだ。分銅の動きを見切れなかった場合は後ろに地を蹴るだけでいい。
 前と横だけを意識すれば良いという点も重要だ。光弾を使った曲打ちを仕掛けられても、分銅が後ろから襲い掛かってくることは無い。背後に回り込むには鎖の長さが足りない。
 そして、この距離を維持しているうちに一つ気付いた事がある。
 攻撃の発生と変化そのものは決して速くは無いのだ。
 分銅の動き自体は見えないくらい速い。しかし、その分銅に動きが伝わるまでに間があるのだ。いかに握り手を早く振ろうとも、鎖がかなり長いゆえにどうしても少し遅れるのだ。光弾を使う場合でも同じこと。光弾が鎖に当たるまで間がある。
 だが、光弾を用いた曲打ちはその軌道変化を見切ることが困難だ。これだけは何度見てもよく分からない。だから攻めあぐねているのだ。
 どうするか。どう仕掛けるか。

(……やはりここは無難に、)

 まずは武器破壊だろう。そう判断したクレアは左手を貫手の形に変え、指先に魔力を集中させた。

(分銅を切り落としたと同時に踏み込む)

 だが、光弾による曲打ちを迎撃するのは難しい。軌道を読みやすい通常の攻撃を待つ。
 それはすぐに来た。
 カイルが左腕を袈裟に振り下ろす。

(これ!)

 見えた。右上から左下に抜ける側頭部を狙った軌道。
 緩い弧を描きながら迫る分銅。
 それがクレアの間合いに入った瞬間、

「疾っ!」

 突き上げるように一閃。
 指先が鎖に触れる寸前、一点に集中させた魔力を開放。
 指先と鎖の間から閃光と火花が生まれ、甲高い金属音が響き渡る。

「!」

 直後、カイルの顔に驚きが浮かんだ。
 同時に、カイルは腰の辺りに右手を回した。
 確認せずとも切られた事は分かっていた。手ごたえがそう言っているのだ。
 右手で外套の下にある留め具を「パチリ」と外す。
 腹部を締め付けていたあるものが緩む感覚。
 それが下にずり落ちないように、カイルは腹に力を込めた。
 カイルの瞳の中にあるクレアの像が急速に大きくなる。
 踏み込んできた。その言葉が文面として脳裏に浮かび上がるよりも早く、カイルは鎖を引き戻していた左手を前に出した。
 握っていた鎖を放り投げ、即座に同じ手で散弾を発射。
 引っ張られた直後に前へ放り投げられた鎖は空中でたわみ、からまるように歪んだ。
 そこへ散弾が追いつく。
 たわんだ鎖に散弾の一つが衝突する。
 その衝撃から鎖は変形し、その変化は別の光弾と衝突する切っ掛けとなった。
 変形と衝突、この反応は連鎖した。

「!」

 瞬間、クレアは驚きに足を止めそうになった。
 目の前で鎖が幾重にも張られているように見える。
 まるで鎖の壁である。が、クレアは足を止めなかった。
 所詮はただの鎖。防御魔法で強引に突破するか、断ち切ればいい、そう思ったからだ。
 その考えは間違っていない。
 しかしカイルの狙いは鎖に注目してもらうことであった。ただの鎖の壁が防御になるとは最初から思っていない。
 そしてカイルは「ひゅっ」と、息を鋭く吐き、腹をへこませた。
「じゃらり」という金音を立てながら、あるものが垂れ下がる。
 カイルはそれを右手で掴み、

「蛇っ!」

 気勢と共にそれを放った。
 翻った外套の下から現れたのは新たな鎖。
 地を這うように低く放たれたそれは、鎖の壁の下を潜り抜け、

「っ?!」

 クレアの左足首にからみついた。
 その手ごたえを感じたと同時に、カイルは「魔力を送り込みながら」、鎖を強く引っ張った。

「くっ!?」

 引き倒されないように、クレアは傷ついた右足で踏ん張った。
 少しずつ引き摺られながらも、尖らせた左手を下段に構える。
 鎖を切るつもりだ。
 それを見たカイルは左手を大きく前に出し、鎖を掴んだ。
 そして、カイルは一本釣りをするかのように、鎖を持つ左腕を力強く真上に上げた。

「!?」

 その直後、クレアの体が浮き上がった。鎖に釣り上げられたのだ。
 ただの腕力だけではこんな芸当は出来ない。カイルは魔力を用いていた。
 左腕で鎖を真上に持ち上げる瞬間、カイルは左手を鎖の下に回し、光弾を発射したのだ。
 真上に放たれた光弾はそのまま鎖を押し上げ、クレアの身を宙に舞い上げた。正確には吊り上げたというよりも、跳ね上げたのだ。
 そして、カイルは背負い投げの要領で、鎖を引きながらクレアを後ろの地面に叩きつけようとした。
 クレアの体は綺麗な弧を描きながらカイルの真上を通過したが、

「破っ!」

 そこでクレアの右足が一閃。二人を結んでいたものは断ち切られた。
 開放されたクレアは姿勢を立て直し、地面との衝突に備えたが、

「!? あぅっ!?」

 着地を決めることが出来ず、その身は地面の上を滑った。

(左足が?!)

 言う事を聞かなかった。そのせいで着地を失敗した。
 原因を確かめるべく、クレアが視線を移すと、

(凍っている?!)

 左足は白い霜に包まれていた。

 これがカイルの鎖が必殺である真たる理由。
 カイルの魔力は精鋭以上。ゆえにその冷却魔法の効果も生半可なものではない。細い足首を凍らせるくらいなら、数秒もあれば十分なのだ。

 クレアは左足首の状態を確認しようと、手を当てた。
 だが直後、クレアはその手をすぐに引っ込めてしまった。
 手が患部に張り付きかけたからだ。表面の湿分は完全に凍ってしまっている。
 魔力が通る反応が無い。血が通っている感覚も無い。このままでは足首が壊死してしまう。
 暖めなくては。だが、自分は炎の魔法は使えない。
 ならば――と、クレアは発光する手の平を患部に当てた。
 光魔法が持つ熱量を使おうという考えである。
 その熱は炎と比べるとあまりに心許ない。応急手当にすらなっていないかもしれない。しかし、何もしないよりはマシであった。
 そして、その様子をカイルは余裕の眼差しで眺めていた。
 あの女の左足首は死んだ。中の血管まで冷却魔法が通ったはずだ。
 しばらくは歩くくらいは出来るだろう。しかし、一ヶ月も経てば腐り落ちる。
 あの女もそれは分かっているはず。
 降伏を宣言するならば今だ。これ以上続けるならば、神が慈悲を下さらない限り、死ぬことになる。
 やはりこれほどの技を持つ武人をここで死なすのは惜しい。降伏すれば命だけは助かるだろう。
 それは苦しい選択であり険しい道だが、何事も命があってこそ。地の底からもう一度這い上がるしかないのだ。そうしてほしい。
 カイルは本当にそう思っていた。だから待った。
 クレアが再び戦闘態勢を取るか、それとも口を開くか、カイルはじっと待った。
 そして暫くして、クレアは口を開いた。
 しかしその内容はカイルが期待していたものでは無かった。

「……それほどの技を持ちながら、なぜヨハンなぞに仕えているのです?」

 再びの質問であった。
 回復のための時間稼ぎだろうか? それはつまりまだやる気ということ。
 残念だ。カイルはそう思いながら答えた。

「あなた方と同じですよ。私も身内を人質に取られているのです。その原因は膨らんだ借金ですがね」

 ヨハンはカイルに同じことをしたのだ。
 これを聞いたクレアは一呼吸分間を置いた後、再び尋ねた。

「冷却魔法とその鎖の技から、氷の一族の人間とお見受けしますが、あなたに相方はいらっしゃらないのですか?」

 これにカイルは首を振った。

「いえ、私に相方と呼べるような者はおりませんが、どうしてそのようなことを?」

 これに答えるまでにクレアは再び一呼吸分間を置いた。出来るだけ時間を稼ぐつもりなのだろう。

「……あなたがた氷の一族の技は二人一組でその真価を発揮する、という話を聞いたことがあるので」
「……」

 カイルは押し黙った。
 クレアの言っていることは正しい。我が一族に伝わる技には、鎖の終端を別の誰かが握っていることを前提としたものが数多く存在する。
 その理由は一族の技が発展した経緯にある。
 我が氷の一族は外界からやって来た侵略者に従属させられていた歴史がある。
 目を背けたくなる歴史だ。しかし、我が一族の技はその悪夢のような歴史の中で生まれた。
 奴隷にされた我が祖先達は、その手足を鎖で繋がれた。
 それは普通の繋ぎ方では無かった。
 鎖の一方は別の誰かの手足に繋がれていたのだ。
 逃走を困難にするためであり、反抗防止のためでもあった。何か問題があった時は連帯責任にすることが出来るのだ。
 だから、何をするにも二人一組でなければならなかった。
 そんな状況の中で、我が祖先達はあきらめず、牙を研いだのだ。
 技の基礎を生み出した、いわゆる始祖にあたる二人の名は不明。兄妹であった、ということしか残っていない。
 二人一組の技は確かに存在する。だからクレアに対して肯定を返すことは出来る。
 しかし、カイルの口が開かない理由は、ある親族のことを思い出したからであった。

イザベライメージ

 それは女性。名はイザベラ。
 幼き頃、自分はイザベラと共に鎖の技を修行していた時期がある。
 しかしイザベラの修行はすぐに終わった。見込み無しとして外されたのだ。光魔法が使えないことが致命的であった。
 だがイザベラはあきらめなかった。自分の修行の様子を影から盗み見ていた。
 そして、自分はそんなイザベラに情けをかけてしまった。師の目が届かぬところで、こっそりと技を教えたのだ。イザベラは物覚えは良かった。
 今となっては後悔している。光魔法が使えぬ身であるにもかかわらず、イザベラは戦場に立ち、そしてカルロの息子と戦って命を落とした。
 生半可に技を知ってしまったからであろう。力が無ければ、戦場に立とうなどとは考えもしないはず。結局、彼女を殺したのは自分なのかもしれない。

「……」

 拭いたくとも拭えない、掃いたくとも掃えない、そんな霧のような感情がカイルの心を包みこんだ。
 カイルはその感情から意識を逸らすために、戦闘態勢を取った。
 これまでの隠すような姿勢とは対照的な構えであった。鎖を見せ付けるような、広く大きな構えであった。
 それは「お喋りはここまでだ」という意思表示でもあった。
 その変化を見たクレアは、時間稼ぎが出来なくなったことを察した。
 しかし、残念だとは微塵も感じなかった。そんなことをする必要はもう無くなったからだ。
 クレアが時間稼ぎをした目的の一つは当然足首の回復のためであるが、ある覚悟を決めるためでもあった。

(『あれ』をここで使うしかない)

 出来れば使いたくなかった技。使うにしても、ヨハンと対峙するまで温存しておきたかった技。
 それは『最終』の名が冠せられた、奥義の発展型。
 この『最終』という冠は、武の頂(いただき)に至ったという意味では無い。使用者への負荷が尋常では無いという意味だ。これが人間に扱える武技の限界だろうという判断からである。
 その様はまさしく命を燃やすが如くだという。
 そんな技であるがゆえか、父は私にこの技を教えなかった。存在を知ったのは文献からだ。
 読むだけでどんな技か理解出来た。そして試す気は全く起きなかった。練習出来る技では無いことは明らかだった。

(あの子がこの場にいなくてよかった。本当に)

 リックは激しいものに心を奪われやすい傾向がある。もしこれを見れば、何としてでも知りたがるだろう。
 だがこれは教えられない。教えたくない。この技はあまりに苛烈で残酷すぎる。
 決めた覚悟を崩さぬように、出来るだけ心を平静に保つために、クレアはゆっくりと構えた。
 それを見たカイルは警戒を強めた。
 クレアが構えを変えたからだ。一本足では無い。両足を前後に開いた半身の構えだ。
 当然のように浮かぶ疑問。
 片足を凍らされたにもかかわらず両足で立つ? あの構えを維持するだけでもつらいはずだ。足がかすかでも言う事をきいてくれるうちに、使えるだけ使おうと考えているのだろうか?
 このカイルの考えは間違ってはいない。
 が、これからクレアがやろうとしていることにとっては、この程度の負傷など些細な問題なのだ。
 クレアはゆっくりと、意識を自分の体内に向けた。
 とくん、とくん、と、脈うつ心臓の音と、穏やかな呼吸音が聞こえる。
 循環する血液。それに添うように張り巡らされている魔力の経路。
 深呼吸をする。それに応じて、体の中を走る魔力の流量と速さが少しだけ変化する。
 瞬間、クレアの意識はそこで止まった。
 その原因は、本当にやるのか? という理性の訴え。
 本当はやりたく無い。
 誰がこんな技を考えたのだろうか、という言葉がクレアの心に浮かび上がる。
 魔力はある内臓から生み出されて体内を巡っている。その循環速度は血液が流れる速度と比例関係にある。
 恐らく、血液は肺から取り入れた活力を全身に運ぶ役割を担っており、魔力の循環もその恩恵を受けているのだろう。
 内臓は弱く脆い。だから骨と筋肉に守られている。
 奥義は魔力を体内で爆発させて加速させるもの。一歩間違えれば自身の体内を破壊する危険な行為である。だから頑丈な骨と筋肉に対して使うのだ。

(……)

 透明な水のように澄まされたクレアの心の中に、誰がこんな技を考えたのだろうか、という言葉が再び浮かび上がる。
 心臓と肺を加速させるなどという――まさしく狂気の沙汰といえる行為。
 それが最終奥義。使い手の命が燃え尽きるという意味で『最終』なのだ。
 クレアの理性はやめろと訴え続けている。
 残念ながら、その意見に耳を貸すことは出来ない。自分に残された武器はもうこれしかないのだ。

「……ふぅーっ」

 再びの深呼吸。
 そして、クレアは一族の英霊達と、武の神に対して祈りを捧げた後、

(……いざ! 最終奥義!)

 遂にそれを使った。
 瞬間、クレアの肩が「どくん」と、跳ね上がった。

「……っっぁ!」

 胸から走った激痛に、クレアの呼吸が止まり、搾り出したかのような悲鳴が漏れる。
 心臓を直接叩かれる痛みというものを初めて知った。
 そしてこれは失敗だ。少し強く叩きすぎた。
 次はもっと慎重に、丁寧に、繊細に、そう思いながらクレアはもう一度使った。

「……!」

 やはり痛いが、今度はかなりマシになった。これなら続けられる。

「……はぁっ、はぁっ、はっ、ふっ、ふっ、ふっ!」

 心臓に合わせて肺も加速させる。

「ふっ、ふっ、ふっ……っ?!」

 直後、胸部に心臓からのものとは違う鋭い痛みが走った。

「げほっ! げほっ!」

 激しく咳き込む。
 口の中に鉄の味が広がる。
 また失敗した。

(肺が少し裂けた?)

 しかし前の失敗と比べると痛みはかなり少ない。この程度ならば止まる必要は無い。止まれない。再開だ。

「……はぁっ、はぁっ、はっ、ふっ、ふっ、ふっ!」

 今度は順調。
 間も無く、クレアは自分の体に二つの変化が起き始めたのを感じた。
 体が熱くなり始めた。凍傷の痛みが気にならなくなるくらいに。全身が赤く火照ってきているのがわかる。
 もう一つの変化は痛み。
 体の中に新しい痛みが生まれた。
 それは魔力を生み出している内臓から発せられている。
 かつて感じたことが無いほどの量の魔力がその内臓から生まれ、全身を巡っているのが分かる。
 だから悲鳴を上げている。明らかに過度の負荷がこの内臓にもかかっている。
 なるほど、確かにこれは命を燃やすが如くだ。
 心臓か、肺か、それとも魔力を生み出しているこの内臓か、いずれか一つが負荷に耐え切れずに潰れたその時、私の命は尽きるのだ。
 この調子でどれだけの猶予があるかは分からない。

(しかし、私が倒れるその前に――)

 倒したい者がいる。

 クレアはゆっくりと前傾姿勢を取りながら、カイルを見据えた。
 睨まれたカイルは表情にこそ出さなかったが、内心たじろいでいた。

(女の身に何が起きている?!)

 異常、異様、分からない。だから恐ろしい。
 カイルの感情は構えに表れた。
 脇を締め、相手から見て細く見えるように立ち、いつでも防御魔法を展開出来るように姿勢を変えた。
 その直後、さらなる変化がクレアの身に起き始めたことにカイルは気付いた。

(……光っている?)

 言葉の通り、クレアの体がぼんやりと発光し始めたのだ。
 全身が均一に光っているわけでは無い。それは線で出来ており、艶かしい曲線でクレアの体に光の模様を描いている。
 まるで血管が発光しているようだ、とカイルは思った。

 その考えは少し外れている。正確には高血圧によって浮き出た血管の傍を通っている魔力の経路が輝いているのだ。皮膚の細胞一片にまで大量の魔力が送り込まれているのだ。

 クレアは体に力がみなぎるのを感じていた。細胞の働きが活発化し、それが筋肉の強化に繋がっていた。 
 心臓の加速が全ての加速をうながしている。
 もし、この状態で間接と筋肉に奥義を使ったらどうなるのか。
 心に生まれた僅かな期待感。クレアはそれに従い、地を蹴った。

「「!」」

 瞬間、クレアとカイル、二人の顔に驚きが生まれた。
 クレアがやったことは突進しながら右手で貫手を放っただけだ。
 しかしそれは一瞬の動作。まばたきする間に終わるほどの速度。
 その凄まじい速度の貫手から放たれた魔力は一条の閃光となり、線上にいた敵兵達を吹き飛ばした。
 貫通力は無いが、まるで閃光魔法のようであった。
 これを受けたカイルは何故か右手を上に揚げていた。
 その腕は奇妙に捻じ曲がっている。
 腕に巻きつけられていた鎖は千切れ、さらに上の中空を舞っている。
 刹那の出来事だが、クレアの突進を受ける際、カイルは右手を発光させていた。
 カイルは防御魔法を張ったのだ。
 しかしクレアが放った貫手は、その光る壁を突き破り、巻かれている鎖を引き千切りながら、その右腕をへし折ったのだ。
 とんでもない速さ、そして威力。
 カイルの顔に驚きが浮かぶのは道理。
 しかし、クレアの顔にも同じ色が浮かんだ理由はカイルとは異なった。

(……失敗した?!)

 カイルの真横を駆け抜けてからようやく、クレアはそれに気付いた。
 魔力の放出が遅れた。本当は衝突の瞬間に魔力を開放するつもりだった。それが遅れたから、魔力はただの飛び道具となって、遠巻きに包囲している兵士達に炸裂したのだ。
 あまりにも力が強すぎるせいで上手く制御出来ていない。成功していれば今の一撃で終わっていた。

(ならば、もう一撃!)

 振り返りながら、再び構える。
 その形は貫手では無く掌底打ち。
 これならば直撃でなくとも相手を吹き飛ばせる。そして、この突進速度ならばそれだけで終わる。
 瞬間、クレアの口尻から赤い泡が零れ落ちた。
 先の踏み込みで肺がさらに傷を負ったのだろう。
 しかし今はそんなことを気にしてはいられない。
 クレアは胸に走る鋭い痛みを逆に糧としながら、再び地を――

「?!」

 蹴ろうとした瞬間、視界の隅に閃光が映り込んだ。
 真横から迫る光。クレアは反射的に防御の姿勢を取ったが、

「っあぅ!」

 その一筋の閃光はクレアの右肩を貫き、その身を吹き飛ばした。
 穴が空いた右肩から鮮血を撒き散らしながら、地の上を派手に滑る。

「な!?」

 カイルの口から思わず言葉が漏れた。

「何事だ」と言おうとした。
 その言葉が全て発せられなかったのは、誰が何をしたのか分かっていたからだ。
 閃光が飛んで来た方向に視線を移す。
 そしてカイルの瞳に映ったのは、やはりヨハンであった。
 ヨハンは苛立たしげな顔をしていた。

(……念のために前に出てきておいて正解だった。まったく、役立たずの馬鹿どもめ。危なくなったら撃てと言っておいたろうが。今のを止めていなければ、カイルは間違いなく死んでいたぞ)

 この時、ヨハンはカイルと目が合った。
 ヨハンはカイルの瞳に怒りの色が混じっていることに気付いたが、無視するかのように背を向けながら右手を外套の下に隠した。
 閃光魔法を放ったその右手は震えていた。
 それはヨハンにとってとても忌々しい震えであった。
 これが無ければ――「老い」さえ無ければと、何度思ったことか。
 これのせいで私は魔法の持続力と連射力をほぼ失ってしまった。今は休み休みに一発ずつ撃つことしか出来ない。防御魔法に関しては維持することすらろくに出来ない。
 湧き上がる苛立ちを隠すかのように、ヨハンは足早に歩き始めたが、

「ヨハン様! なぜ……なぜ、このような!」

 直後、その背にカイルの言葉が叩きつけられた。
 明らかに怒気を含んだ声。
 しかし、ヨハンはそれを無視し、

「……とどめを刺しておけ! カイル!」

 と、背中越しに心無い命令を下した。

   ◆◆◆

 それを見たバージルは思わず動いていた。
 廊下に置かれていた飾り鎧から鉄仮面を剥ぎ取ったのだ。
 顔をすっぽりと覆い隠せる代物だ。
 そこでバージルの動きは止まった。
 理性が訴えたのだ。「何をするつもりだ。馬鹿なことはやめろ」と。
 その通りだ。これは後先考えていない直情的な行動だ。
 しかしそれでも、そう分かっていても、立ち止まっていられないのだ。
 胸の奥からこみ上げて来るのだ。熱く、そして粘っこい感情が。
 それが理性を押し流した瞬間、バージルは傍にいたクレアの従者に向かって声を上げていた。

「馬を貸してくれ!」

   第三十三話 盾 に続く
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テーマ : オリジナル小説
ジャンル : 小説・文学

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No title

ご無沙汰してます。ある程度溜まったところで読む方が面白い、と思っていままでガマンしていましたがこらえきれず読んでしまいました。

相変わらず面白いですね。

続きも期待しています。とりあえず再来月までまたガマンしよう。

Re: No title

> ご無沙汰してます。ある程度溜まったところで読む方が面白い、と思っていままでガマンしていましたがこらえきれず読んでしまいました。
>
> 相変わらず面白いですね。
>
> 続きも期待しています。とりあえず再来月までまたガマンしよう。

ありがとうございます。またご来訪をお待ちしております。

No title

こんにちわ^^
いつも読むのを楽しみにさせて頂いてます

1つ質問なんですがだいたい1話のアップに
どれぐらいの期間がかかるんでしょうか?

今後もアップ頑張って下さい

Re: No title

一概に答えるのは難しいです。
自分は一つの戦いを一話として扱ったり、情勢変化を一話として括っているだけなので、
各話の長さに関しては意識したことがありません。
ゆえに短い話も長い話もあります。

執筆のペースに関しては一日千字ほどです。

> こんにちわ^^
> いつも読むのを楽しみにさせて頂いてます
>
> 1つ質問なんですがだいたい1話のアップに
> どれぐらいの期間がかかるんでしょうか?
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稲田 新太郎

Author:稲田 新太郎
音楽好きな物書き。ゲームも好き

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