虎さんと猫さん9

虎さん

決闘から数日後――

虎は同じ干支である辰のもとを訪ねていた。

虎「……やっぱり、ダメなんか?」

虎の質問に対し、辰は渋い顔で首を振った。

虎「なんとかならんのか? 一匹くらい干支を増やしても――」

虎は最後まで言葉にすることが出来なかった。辰が鋭く「無理だ」と言い放ったからだ。

辰「わかってくれ。何度言われても、無理なものは無理なんだ」

虎「……」

   ◆◆◆

辰の元を離れた虎は、苦い顔で街の中をぶらついた。

虎(どうすっか。そういえば腹が減ったな。とりあえずメシでも――)

♪タイガー、タイガー、タイガァ~。タイガァ~マ~ス~ク~♪

その時、虎の携帯が鳴った。

虎「はい、もしもし」

知り合いからの電話であった。
何故かはわからないが、知り合いは慌てているような様子であった。

虎「ちょっと落ち着け。何を言ってるんかさっぱり分からへんぞ」

相手の声に耳を傾ける虎。

虎「……え? ……なんやて?!」

その内容に虎の表情は一変した。

虎「場所は? 分かった、すぐ行く! ……おい! そこのタクシー! 止まれ!」

携帯を乱暴に切りながら、虎はタクシーに向かって手を振り上げた。

   ◆◆◆

虎が向かった先、それは病院であった。

そしてある病室に、虎が信じたくない光景があった。

彼が――猫君が白いベッドの上に寝ていた。

全身に巻かれた包帯、ベッドの周りにあるドラマでしか見たことないような精密機器が、猫君の容態の悪さを物語っていた。

虎「……どういうことや、何があったんや。こんな酷い怪我、どうしたんや」

虎は先に来ていた知り合い、犬に事情の説明を求めた。

犬「……あのデブ猫との決闘の後、別の勢力が襲撃してきたんや。猫君はそいつらにやられたんや……」

三つ巴の勢力争いだったのか。
ここにきて、虎はようやく事態を理解した。

おそらく、あのデブ猫は自分一匹の力だけで他を全て制圧できると踏んでいたのだろう。

しかしその考えを猫君が覆した。

辛くも、見事な勝利だった。だが、そこをつけこまれた。
デブ猫との戦いで猫君はかなりの傷を負っていた。連戦なんて出来るはずがない。

虎「……っ」

腹立たしい。しかしそれを声に出すことは虎には出来なかった。

漁夫の利――悔しいが、悪くない手だ。
同じ立場なら、自分が猫君の敵であったならば、同じことをしていただろう。
偽術、詐術、横取り――そのような普段ならば忌み嫌われる戦法であっても、状況によっては許され、時には賞賛されるものなのだ。
どんな手段もその正当性を決めるのは時と場合なのだ。

だから声に出せない。虎は戦いというものの本質を、自然の掟の高潔さと残酷さを知っているからだ。

虎「……」

しかしやはり胸糞悪い。
思考が上手くまとまらない。

だから虎は祈った。
一日も早い猫君の回復を。

続く
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テーマ : オリジナル小説
ジャンル : 小説・文学

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稲田 新太郎

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