虎さんと猫さん8

虎さん

間を置かずして決闘は始まった。

ぶつかりあう二つの小さな生き物。

虎(……)

大型獣である虎にとってはそれは少々退屈なものであったが――

しかし激しい。小さくとも、これは命をかけたせめぎ合いなのだ。

そして、戦いは少しずつ太った猫の方に傾いていった。

虎(……なにしとんねん、猫君。さっさと、こう、がつんと決めんかい!)

気をもまれる虎。
声に出せないことが虎をさらに苛立たせる。

この窮地を救ってやりたい。自分の力をもってすれば簡単に出来る。

しかしそうは出来ない。
これは「彼」が自身の力だけで乗り越えなければならないことなのだ。

だが、そんな虎の思いに反し、「彼」は徐々に追い詰められていった。

虎(あー、もう!)

限界だ。居ても立っても居られなくなった虎が物陰から身を乗り出そうとしたその瞬間、

虎「!」

戦況は一転した。
「彼」は起死回生の一撃を決めたのだ。

虎(よっしゃぁ!)

虎がガッツポーズを決める。
思わず声に出るところだった。
それほどまでに見事な逆転劇。

決闘は「彼」の勝利に終わった。

この勝利を共に祝おう。虎は姿を見せようとしたが、寸でのところでその足は止まった。

虎「……」

虎の視界に入ったあるものがそうさせた。
それは「彼」の妻と子供達の存在であった。

妻と子供達は父のそばに駆け寄り、彼は愛する家族達を抱きしめた。

虎「……ワイはただのお邪魔虫やったか。……なんや、来た意味、無かったな」

この場に、部外者は不要。
そう考えた虎は何もせずにその場を去った。

猫「……」

そして、虎の存在に途中から気付いていた彼は、
その背を黙って見送ったのであった。

続く
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テーマ : オリジナル小説
ジャンル : 小説・文学

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稲田 新太郎

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