話せない6

犬さん

俺は犬だ。

この世には喋れる動物が数多くいるが、俺は喋れない。
「ワン」か「バウ」くらいしか言えない。

だが、考えることは出来る。人間のように。
俺の飼い主がそれに気づいているかどうかはわからないが。

今、俺はご主人様(娘)に散歩をしてもらっている。

幸せだ……。

犬(……ん?)

その時、犬の目にあるものが映りこんだ。

犬(あ、犬のウンコだ)

俺も犬だけど好き好んで踏みたくは無い。俺はキレイ好きなのだ。

進路を変えて華麗に回避。

だが、その直後、

娘「あ」

なんてこった。ご主人様が踏んでしまった。

娘「うわ~。やだ~」

本当にイヤそうな顔をしている。当たり前か。

娘「最悪だ~。今日はもう帰ろう」

え? もう散歩終わり?

ご主人様が踵を返し、家に向かって歩き始める。

俺は抵抗した。全力で。

娘「ちょっと! なに踏ん張ってるのよ! 帰るの!」

イヤだ。まだ帰りたくない。

娘「言う事を聞いてよ!」

イヤだ! 地に爪を立ててあらがう。

娘「言う事を 聞 き な さ い! 帰るって言ってるでしょ!」

イ ヤ だ!

拮抗した綱引きが続く。

いかん、前足が痺れてきた。位置を変えよう。

より踏ん張りやすい姿勢になるために、前足を一歩前へ出す。

ふにゅ。

犬「?」

え? ふにゅってなに?
なんか足の裏がやわらかくて暖かい。

娘「あ」

ご主人様は俺の前足を見て固まっていた。

視線を前足に落とす。

犬「……」

俺はウンコを踏んでいた。

娘「……えっと、あー、その、ゴメン?」

なんで疑問形なの。

悲しみに暮れる俺は、うるうるとした瞳をご主人様に返した。

娘「……そんな目で見ないでよ」

悲しい。愛が欲しい。今すぐ。

じり、と、ご主人様に詰め寄る。

娘「え? なに近づいて来てるの?」

抱きしめて欲しい。いつものように。

じり、と、ご主人様に詰め寄る。

娘「え? なに? なんなの?」

伝わらないこの気持ち。もどかしい。

いいもん。抱きしめてくれないなら、飛び掛っちゃうもん。
この「前足」で、飛び掛っちゃうもん。

じり、と、ご主人様に詰め寄る。

娘「ちょ、あんた、まさか」

ガバッ

娘「ぎゃーーーー!」
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テーマ : オリジナル小説
ジャンル : 小説・文学

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No title

こんにちは。
初めまして。

面白く拝読させていただきました。
っていうか、ラストの
>娘「ぎゃーーーー!」
には、声を出して笑ってしまいました。
最初に載っている画像のワンちゃんよりも小型犬のイメージでしょうか。

微笑ましくも面白い物語でしたヽ(*´∀`)ノ

Re: No title

> こんにちは。
> 初めまして。
>
> 面白く拝読させていただきました。
> っていうか、ラストの
> >娘「ぎゃーーーー!」
> には、声を出して笑ってしまいました。

ありがとうございます。

> 最初に載っている画像のワンちゃんよりも小型犬のイメージでしょうか。
>
> 微笑ましくも面白い物語でしたヽ(*´∀`)ノ

おっしゃる通り、画像だと大型犬ですが、筆者はもう少し小さいものをイメージしています。
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稲田 新太郎

Author:稲田 新太郎
音楽好きな物書き。ゲームも好き

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