話せない2

犬さん

俺は犬だ。

この世には喋れる動物が数多くいるが、俺は喋れない。
「ワン」か「バウ」くらいしか言えない。

だが、考えることは出来る。人間のように。
俺の飼い主がそれに気づいているかどうかはわからないが。

今日は娘と一緒に留守番をしている。

平和だ……。

犬(……ん?)

突如、玄関に何者かが迫る気配。

犬(この感じ、ヤツか!?)

犬「バウバウバウバウ!!(訳:曲者じゃあ! 出会え出会えい!!)」

娘「うわ!? びっくりしたあ! いきなり何?」

犬「バウバウバウ!(姫ぇ! 敵襲で御座いますぅ!)」

娘「何に吠えてるの?」

ピンポーン

玄関からの声「郵便でーす」

娘「なんだ、郵便屋さんか」

犬「バウバウバウ!(お気をつけくだされ姫ぇ!)」

娘「受け取りに行ってくるから、あんたはここで待ってなさいよ?」

犬「バウバウバウ!(そんな……! 姫お一人で向かわれるなど、危険ですぞ!)」

ピンポーン

娘「はーい、いま行きまーす」

犬「バウバウバウ!!!(この犬、微力ながらお供いたしますぞ、姫ぇ!)」

タッタッタッ
玄関に向かって娘が走る。

犬「バウバウ!(我が秘技、絶・天狼抜刀牙、今こそお見せするとき! いざ参る!)」

娘のあとを追って犬がダッシュする。

娘「コラ!」

犬(ビクゥ!)

娘「待ってなさいっ言ったでしょ! おすわり!!」

犬「クゥ~ン(そんな……姫……! この仕打ちは……あまりに……!!)」

ピンポーン

娘「はいはい、今いきますー」

犬「バウ!(姫ぇ!!!)」

   ◆◆◆

その後、郵便受け取りは当然のように何事も無く終わった。

娘「もう、あんなに吠えちゃダメでしょ?」
犬(あー、楽しかった)

一人時代劇ごっこがマイブームの犬であった。
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テーマ : オリジナル小説
ジャンル : 小説・文学

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稲田 新太郎

Author:稲田 新太郎
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