ネゴシエイター桃太郎2

桃から生まれた桃太郎。
彼が犬、サル、キジの三匹をお供に、鬼退治をした昔話はあまりに有名である。

民を苦しめていた鬼を退治したことは立派なことだ。だが、なによりもすごいのは、たったきび団子一個で三匹にそんな危険な仕事をさせたことである。

桃太郎、彼の真の武器は勇気では無かった。
彼の武器は話術とコネ。どんな難題も口先で解決する。そんな彼のことを皆は交渉人(ネゴシエイター)と呼んでいた。

   ◆◆◆

鬼が島への道程が中盤に差し掛かったある日のこと――。

犬「あれ?」

犬はある異常に気づいた。

犬「猿は? あいつどこ行った?」

キョロキョロと辺りを見回す。

犬「あいつ、もしかして……逃げた?!」

犬はすかさず桃太郎のところへダッシュした。

犬「桃太郎さぁん!」

桃太郎「どうした?」

犬「猿のやつがいないんですよ! あいつ、逃げちゃったんじゃないですかね!」

桃太郎「ああ、ちょうどよかった。その事で話がある。キジを呼んできてくれ」

   ◆◆◆

桃太郎「紹介する。今日から一緒に旅をすることになった新しい猿だ」

ゴリラ

猿?「ウホ」

犬&キジ((ポカーン))

桃太郎「さあ、挨拶して」

猿?「キョウから、ミナサンとイッショニ、タビをスルコトニナッタ、サルデス。オネガイヨロシクします」

犬「なんてべたべたな片言! しかも、なんだ『おねがいよろしくします』って! 日本語が怪しいじゃないかぁ!」

犬「桃太郎さん、これ、明らかに外国の方ですよね!? ていうか、これは、サルじゃなくて、ゴリ……」

桃太郎は犬に向かって手をかざし、その発言を封じた。

桃太郎「いや、これはれっきとしたサルだ。いいね?」

逆らってはいけない、そんな威圧感があった。

しかし、犬はそれでも尋ねずにはいられなかった。

犬「……あの、サルは、前の彼はどうしたんですかね?」

桃太郎「……彼は、バナナ農園で働いてもらうことになった」

犬(バナナ農園!? どこにあるの、それ? やっぱり南の国?)

桃太郎「彼の勤務態度がもう少し真面目であれば、別の道もあったのだが……しょうがない」

犬「……」

桃太郎「まあ、喜べ。新しい彼は十分な戦力になる。君たちの仕事も楽になるぞ」

そう言って、桃太郎は笑った。

犬「……」

犬は何も言えなかった。
桃太郎の背後にある得体の知れない大きな何かに、ただ怯えるしかなかった。
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テーマ : オリジナル小説
ジャンル : 小説・文学

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稲田 新太郎

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