九十九神

長く使われた物には命が宿る、という話を聞いた事はあるだろうか。
そのようなものを九十九神と呼ぶらしい。

もし、それが本当だとして――
意思を持った彼らはどのようなことを考えるのだろうか?

それでは、これから彼らの生活を覗いてみよう。

仙台箪笥さん

俺はタンスだ。

人間たちの衣服を保管するのが俺の仕事だ。

だが、今の俺にはそれよりも大事なこと、生きがいのようなものがある。

これからそれをお見せしよう。

タンス「……」

息を殺すタンスのもとに、一人の男が歩いてくる。

男「~~♪」

男は上機嫌なまま、タンスの横を――

ガッ

男「ぎゃああああああ! 小指がああああああああ!」

足の小指を押さえながら悶絶する男を、タンスはどや顔で見下ろした。

タンス「……ふっ、またつまらぬ小指をやってしまった」

これを同じ九十九神である花瓶が賞賛した。

花瓶「タンス先輩すげえ! これでもう三人目だ!」

タンス「おいおい、そんなに褒めるなって。これぐらい、大したこと無いから」

花瓶「でも、一日で三人ってすごいですよ! あとは奥さんの小指をやったら、パーフェクトじゃないですか!」

タンス「奥さんかー。あの人は難しいなー。注意深いからなー」

花瓶「いやー、でも、ほんますごいですねー」

タンス「まあ、『角を極めし者』とか呼ばれてたことあるし、これくらいはね」

花瓶「マジすか! なんかコツとかあるんですか!」

タンス「それはね、気配を殺すことやね」

花瓶「全然わからないです!」

タンス「僕はここにいない、ここにタンスの角なんて無いと、相手に思わせるんや」

花瓶「やっぱりわからないです!」

その時、小さな子供が花瓶のそばにやってきた。

花瓶「ん? なんや、坊主?」

子供はおもむろに花瓶を持ち上げた。

花瓶「うお! なにするんや!」

何が興味を引いたのか、子供は中身をのぞいたり、持ち上げて底を確認したりし始めた。

花瓶「危ない、危ないって! 離せ! いや、降ろしてくれ!」

ツルッ

子供は手を滑らせ、花瓶を手放した。

花瓶「あ」

ガシャアアアン

タンス「花瓶ーーーーーーーーっ!!」

花瓶「……」

返事が無い。ただのしかばねのようだ。

タンス「仇は……お前の仇は俺が討ってやるぞーーー!」

後に「小指殺し」と呼ばれる、タンスの伝説の始まりであった。
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稲田 新太郎

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