熊さん16

熊さん

俺は熊。高校生だ。
俺は今、バイクで登校している。

今日は涼しい。バイクに乗るには良い日だ。雨が降っていなければだが。
今は梅雨。今日は大雨だ。

当然のようにずぶぬれである。水もしたたるいいクマである。
でも大丈夫。ちゃんとレインコートを着ているから。

ただ、このレインコートはもう年季物なので、雨漏りが少し心配――

(あ)

瞬間、「じわ」という冷たい何かが染みこんでくる感覚が走った。陰部に。

   ◆◆◆

トイレにピットイン。
すぐにデリケートな部分の状態を確認する。

「Oh」

デリケートな部分がデリケートなことになっていらっしゃる。
アカン。これは恥ずかしい。ちょっともらしちゃったみたいな感じになってる。

「……まあ、でも、これくらいならすぐ乾くやろ」

気を取り直したワイは再びバイクにまたがった。

   ◆◆◆

しかし走り出してから三分もしないうちに、

(あ)

「じゅわ」という冷たい何かが染みこんでくる感覚が走った。

   ◆◆◆

二度目のピットイン。
すぐにデリケートな部分の状態を確認する。

「holy shit」

とんでもないことになってる。完全にやらかした感じになってる。
アカン。これはすぐには乾かない。
ならばどうするか。
ひらめいた。乾かないなら濡れちゃえばいいじゃない。

「……フンガーッ!」

レインコートの胸元を力任せに引き裂く。
よしこれでいい。
上半身の前面をびしょぬれにすることで、陰部をごまかす作戦だ。
これならすぐに陰部もびしょぬれになるだろう。レインコートの胸元がやぶれちゃったから、アソコまで雨水が垂れてきちゃった、という言い訳が出来る! 完璧! 天才!
自分のひらめきの良さが怖いわ。そんなことを考えながらワイは再びバイクにまたがった。

   ◆◆◆

「みんなおはよう!」

無駄に元気に挨拶しながら教室に突入するワイ。
クラスの連中の視線が集まる。
目立つよな。しょうがない。びしょぬれやもん。
……あれ? なんか、皆の視線が下に向いてるような。

「おい、熊、それ……」

友達が下部を指差す。
なんやねん、と思いながら下を向くと。

「オーマイガ」

陰部の周りがちゃんと濡れてないー! 濡れてない部分がドーナツ型になってるー! 超目立つー!
言い訳タイム開始ー!

「いや、これは違うんや」
「違うって、何が?」
「これはねドーナツ放熱現象のせい」
「は? ドーナツ放熱現象?」
「そや、ドーナツ型に放熱される現象のことや。熊のここはそういうふうになってんねん。その筋の学会では有名な話や」
「その筋ってどの筋だよ」
「とにかくそういうわけやから違うんや」
「違うって何が?」

この話題は昼休みまで引っ張られた。
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熊さん15

熊さん

俺は熊。高校生だ。

その日、俺は思い切って友達に悩みを打ち明けることにした。

熊「なあ、ちょっと聞いてくれるか」
友達「いやや。めんどくさい」

2秒で終わった。俺達の友情しょぼすぎ。

熊「そんなこというなや。とりあえず聞けって」
友達「しゃあないな。じゃあ30文字でまとめてくれ」
熊「30で?!」
友達「うん」
熊「いや……30は……ちょっときついかな~」
友達「じゃあナシで」
熊「……わかった。ちょっと考えるから待って」
友達「……はよ」
熊「……ばあちゃんボケた↑♪ 兄貴が介護↑♪ イェア! 俺どうしよう!♪ どうすればいい?♪ わからない!♪ YO↑ YO!↑」
友達「……なんでヒップホップにした? しかも30文字越えてるやん」
熊「将来ヒップホップで食っていこうかなと思ってるから」
友達「ヒップホップで?!」
熊「嘘に決まってるやろ。要はばあちゃんの介護で兄貴が大変なことになっとんねん」
友達「その説明だけでええやん! ヒップホップにする必要一切無いやん! 30文字以内で簡潔にまとまってるやん!」
熊「それで、ワイはそんな兄貴にどうしたらいいと思う?」
友達「……どうしたらいいかはまだわからん。もっと詳しく説明してくれ。なにが大変なんや」
熊「仕事との両立が大変なんや。兄貴が住んでる職場の寮からばあちゃんの家は結構な距離があるし。往復だけでもしんどいって言ってた」
友達「……それは厳しいな。今の仕事をやめて引っ越せば、なんて軽はずみなことは言えんし。……正直、赤の他人でただの学生の俺が正解を出せることでは無いような気がするぞ」
熊「チャラいお前に人生の分岐を決めてもらおうなんて思ってないし、期待もしてないから安心してくれ。ぶっちゃけ誰かに聞いてほしかっただけやし」
友達「割とマジでひどいこと言ってね? 怒っていい? 俺、怒っていいよね?」
熊「ごめんごめん。冗談冗談」
友達「……老人ホームとか、あの、介護施設? とかいうやつには入れんのか?」
熊「全然空きが無いって。どこも一杯みたいや」
友達「兄貴以外に誰か頼れる人はいないの?」
熊「……いないことはない、けど」
友達「けど?」
熊「多分、いい返事はもらえんと思う」
友達「なんで?」
熊「……その原因はばあちゃんにあんねん」
友達「ばあちゃんの何が問題なんや」
熊「うちのばあちゃんは性格が荒いんや。すぐに手が出る。その正確のせいでばあちゃんは一人暮らしになった。そしてボケた今でもその気質は変わってない。だから兄貴以外の誰も世話をしたがらんねん。その兄貴もイヤイヤでやってる」
友達「……」
熊「それを見てワイは思ったんや」
友達「思ったって、なにを?」
熊「これは人生の縮図なんやなって」
友達「縮図?」
熊「そうや。老いて、力が無くなって、どうしようもなくなったその時、どう扱われるかにその者の人生が現れるねん」
友達「……」
熊「金があれば人を雇えたかもしれん。金が無くともそれまでの行いが善ければ、世話をしてくれる人が現れたかもしれん。……やけど、ばあちゃんにはそういうものが何も無かった。金遣いの荒い乱暴者の終わり方なんてそんなものなのかもしれん」
友達「確かに、それはその通りかもしれんな」
熊「……ワイはまだ若いけど、ちょっと不安やわ。ワイ、性格悪いし」
友達「自分のことをよくわかってるな」
熊「うるさいわ」
友達「……まあでも、そうやな、真剣に考えれば俺も不安やわ。もし、どうしようもなくなってしまった時、誰にも迷惑をかけずに静かに自分を終わらせる度胸なんて、全然無い」
熊「……」
友達「……」
熊「……だからな、ワイは帝王を目指すことにした」
友達「……え? 今なんつった? 帝王?」
熊「そうや帝王や。皇帝でもいい」
友達「……一応聞くけど、なんで?」
熊「老後ためにきまっとるやろ! 帝王になれば老後の心配なんていらへん! 周りの連中全部アゴで使って世話させれるやん! 権力で老後という脅威をねじ伏せたるねん!」
友達「またアホなことを言い始めたな」
熊「確かに帝王は大げさかもしれん。もうちょっと現実的な役職を狙っていくわ」
友達「え? マジで言ってんの?」
熊「そうや。そのための努力を明日から、いや、今この瞬間から始める!」

そう言って熊は一冊の本を取り出した。
表紙には「熊でもわかる帝王学」と書いてある。

友達「……お前、本物のアホなんじゃね?」

あきれる友達をよそに、本にかじりつく熊。

しかし友は気付いていなかった。
この瞬間から伝説が始まったのだ!

次回から新章『覇道編』がスタート!
熊が破竹の勢いで帝王の座へかけあがる物語を描く!










うそです

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内臓会議2

人間の頭の中には脳ミソが詰まっている。

脳ミソの中では色んな仕事が行われている。

今回は、そんな脳ミソの多忙な一日をご覧いただこうと思う。

   ◆◆◆

男「いただきます」

一人の男が朝食を摂ろうとしている。

メニューはタマゴかけご飯だ。

茶碗と箸を手に取り、口を近付ける。

男「!?」

唇が触れる寸前、男は動きを止めた。

男「なんか、変なニオイがする……」

   ◆◆◆

直後、脳内で警報が鳴り響いた。

理性「緊急事態だ!」

秘書「どうしたんですか!?」

理性「宿主が腐ったタマゴを食べようとしている!」

秘書「え!? またですか?! 先月もそれやってお腹を壊しましたよね!?」

理性「そうだ、またなのだ! この宿主は懲りない男なんだ!」

秘書「どうします?!」

理性「食べるのをやめるように食欲を説得するしかない! 関係者を会議室に招集してくれ!」

   ◆◆◆

瞬く間に会議室に関係者が集められた。
メンバーは胃などの食に関するものたちだ。

理性「変なニオイがする生卵を食べようとしているようだが、食欲殿、ここはどうかその欲求を抑えてはいただけないだろうか」

食欲「……確かに、危ないかもしれない。でも、僕はどうしても卵かけごはんを食べたいの」

胃「食べるんだな! よし、総員戦闘準備だ!」

腸とか「イエッサー!」

理性「待て待て待て! おまえら慌てるな! まだ説得交渉始めたばっかりだから!」

今回の件に関して、行動の最終決定権は食欲にある。
理性はなんとかして食欲を説得し、腐ったタマゴを食べることをやめさせなければならないのだ。

理性「……おほん、食欲殿、過去の結果から見ても明らかなのだ。過去4回、似たようなニオイがするタマゴを食べ、その結果我々は一度の例外無くひどいめにあっているのだ」

食欲「申し訳ないが、そのデータでは首を縦に振れないなー」

理性「なんで?!」

食欲「データの信頼性が疑わしいかな、って思うんだよなー」

理性「信頼性?!」

本能代理「だって、たった4回なわけじゃん? 今まで運が悪かっただけかもしれないじゃん? 今回はいけるかもしれないじゃん? やっぱり数字を信じるには回数がなきゃ」

理性「ふざけんな! じゃあ、100回腐ったタマゴを食えばいいのか?! アホか、死ぬわ! ていうか、回数の問題じゃねえだろ! これは実験じゃ無いんだよ! ていうか、自分の体で実験とか、どMか?! ていうか、データの信頼性ってお前、なんでそういうことに関しては無駄に知識があるんだよ! テンパりすぎて『ていうか』って3回言っちゃったよ!」

胃「よし、決まったな! 総員戦闘準備だ!」

腸「イエッサー! 状況開始! ムーブムーブ! GoGoGo!」

理性「待て待て待て!」

   ◆◆◆

その後、会議の結果がどうなったかというと――

腸内細菌A(善玉菌)「胃が突破されました!」

腸内細菌B「エネミーインカミング!」

善玉菌隊長「総員構えろ! 視認したと同時に撃て!」

腸内細菌A「敵、来ます!」

直後、ぞろぞろと菌の集団が腸内になだれ込んできた。

ヤバイ菌A「ヒャッハー! 侵略だー!」

ヤバイ菌B「今日からこの腸は俺たちのものだ!」

ヤバイ菌C「屈服か死か選べ! 慈悲を与えてやる!」

善玉菌隊長「来たぞ! 撃て! 撃ちまくれ!」

この第五次腸内大戦は辛くも善玉菌達の勝利に終わった。

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ネゴシエイター桃太郎 最終回

その後、犬はその辺をのらりくらりとぶらついた。

桃太郎の姿はどこにも見えなくなった。匂いもしない。

歩き疲れた犬はある村で足を止めた。

その村は居心地が良かった。
村人が善い人ばかりで、なにより特産品である桃ときび団子がおいしい。

そして犬はその村で一匹の雌犬と恋に落ちた。

甘く平和な時間が流れた。まさに至福であった。

そして仕事と家庭を持ち、この村に骨を埋めることが確実になったと、そんな考えが犬の頭に生まれた時、それは起きた。起きてしまった。

ある夜、仕事からの帰り道に犬は信じたくない光景を目にした。

犬「……燃えている?」

村は赤い光に包まれていた。

自然と犬の足が走り出す。

無事でいてくれ、お願いだ、と心の中で叫びながら走る。

しかしその願いに神は応えなかった。

犬「……」

犬の家は燃え盛っていた。入れないほどに。

そして愛する者の亡骸が玄関の近くにあった。

犬「……」

犬は呆然とそれを見つめた後、ふらふらと歩み寄った。

あまりのことに現実感が無い。

恐る恐る亡骸を抱きしめてようやく、犬の目から涙がこぼれた。

そして犬は天を仰ぎながら遠吠えを上げた。

その直後、

犬(!?)

何者かの接近を犬の鼻は捉えた。

が、警戒心はすぐに消えた。

知っている匂いだったからだ。

しばらくしてその者は暗闇から姿を現した。

ゴリラ「……なんだお前か」

遠吠えを発していたものが敵で無かったことを確認したゴリラは、構えていた武器を下ろした。

どこかへ戻ろうとするゴリラの背に犬が声をかける。

犬「一体何があったんですか?! ゴリラさん!」

ゴリラ「見てわかるだろう! 鬼が攻めてきたんだよ!」

犬「……」

それは犬が期待していた答えでは無かったが、犬の聞き方も悪かった。
「どうしてこんなことに」と尋ねた方が正解であった。

そして、犬はゴリラが流暢に喋っていることに疑問を抱いたが、それを尋ねる間も無く、ゴリラはどこかへ走り出した。

犬はその背を追った。

あの二人のことが頭に浮かんだからだ。

犬の予感は的中した。

ゴリラが走った先にはフェニックスと桃太郎と、そして一人の少年の姿があった。

犬は桃太郎のそばに駆け寄ったが、

犬「……」

声をかけることが出来なかった。

桃太郎は重症を負っていた。誰が見ても助からないほどの。

そして場に漂う重い静寂を破ったのはその桃太郎であった。

桃「……ひさし、ぶり、だな」

桃太郎は口から血を噴出しながら、言葉を続けた。

桃「口先しか武器の無い私に、こんなことは向いていないと、それは、わかっていたのだが……」

桃「故郷への、思いというものは、やはり大きいもの、だな。良い思い出があれば、なおさら」

桃「ここで戦っても、勝てないことは、わかっていたんだ。村人が逃げられるように、時間かせぎをするだけ、そう思っていたが、出来なかった」

桃「結局、村も、村人も、守れなかった。ただの、役立たずの能無しだな、私は」

これに少年が声を上げた。

少年「そんなことないよ。おじさんは僕を助けてくれた」

桃「……」

これに桃は何も言わなかったが、その表情は僅かにやわらいだように見えた。

桃「……」

そして、桃太郎はそのまま静かに息を引き取った。

   ◆◆◆

死者を埋葬した後、犬と二匹は少年を連れてその場から離れた。

鬼が戦線を押し上げてきたのだ。戦火から逃れるため、犬達は遠くへ逃げなければならなかった。

その過程で犬と二匹は互いのことを話し、ゴリラとフェニックスが桃太郎と同郷の友であることを犬は知った。

そしてしばらくして犬達は新天地での生活を始めた。

全てが変わった。その中でも特に犬の変化は大きかった。

まず己に厳しくなった。甘えの無い厳格な振る舞いをするようになった。

それを見て少年もそのように振舞うようになった。

二人とも分かっていたのだ。この無念を晴らすには強くならねばならないことが。
そして強い精神を身に付けることがその近道になることも。

その重く厳しい時間は淡々と流れていった。

   ◆◆◆

十年後――

たくましい男に成長したかつての少年は、懐かしい故郷を遠く見据えていた。

彼の傍にはイヌ、サル、キジの姿がある。

奪われた故郷はいまだ鬼達に占領されている。

情報力と交渉力くらいしか取り柄がなかったかつての桃太郎はこの地で奴らに敗れ、そして死んだ。

だが、彼が守り残した一人の少年が、強大な武と勇を持つ男となって帰ってきたのだ。

   ◆◆◆

桃太郎

桃から生まれた桃太郎。
犬、サル、キジの三匹をお供に鬼退治。

報酬はきび団子一個。

なぜそんなちっぽけな報酬で三匹は鬼対峙に付き合ったのか?

その真実が物語の背景にあることを残念ながら皆は知らない。

きび団子は彼らにとって絆であり、心を燃やす燃料なのだ。
奪われた故郷の名物であったそれを見つめ、思い出すことで、己が成すべきことを確かめるためのものなのだ。

本当の桃太郎、彼の武器は勇気でも武力でも無かった。
彼の武器は話術とコネ。それだけの男。

しかしそんな彼が守り残したものが、後に伝説と成ったのだ。

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プロフィール

稲田 新太郎

Author:稲田 新太郎
音楽好きな物書き。ゲームも好き

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